カレントテラピー 30-6サンプル page 18/30
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61.6%,平均体重減少量は43.5kg,胃バンディング術はそれぞれ47.5%,28.6kgであった.スリーブ状胃切除術に関してのsystematicreview 12)では超過体重減少率は55.4%とのことであり,体重減少に関しては胃バイパ....
61.6%,平均体重減少量は43.5kg,胃バンディング術はそれぞれ47.5%,28.6kgであった.スリーブ状胃切除術に関してのsystematicreview 12)では超過体重減少率は55.4%とのことであり,体重減少に関しては胃バイパス術,スリーブ状胃切除術,胃バンディング術の順で効果があると考えられる.ただ,スリーブ状胃切除術は比較的新しい術式であり,その長期成績に関してはまだ報告が少ない13),14)が,そのなかでも少なくない数のrevisionsurgeryが報告されている.そのrevision率は約20%であり,胃バイパス術,胃バンディング術と比較すると高いrevisionの原因は,不十分な体重減少や体重増加,コントロール困難な逆流性食道炎,合併疾患(糖尿病など)の不十分なコントロール,胃管の狭窄などが挙げられる.しかし,逆にいえば,症例を選べば7,8割はスリーブ状胃切除術単独で良好な結果を得ることができるため,revision surgeryの準備ができている施設では,良好な手術であるといえよう.12),13)Ⅴ合併疾患に対する手術の効果術後糖尿病の臨床的治癒(投薬やインスリンなどを用いずに,検査値が正常化するもの)および改善率は胃バイパス術でそれぞれ87.3%,93.2%,スリーブ状胃切除術で66.2%,86.9%,胃バンディング術で47.9%,80.8%であり,高血圧の治癒,改善率は胃バイパス術で67.5%,87.2%,胃バンディング術で43.2%,70.8%であった.また,脂質異常症の改善率は胃バイパス術で96.9%,胃バンディング術で58.9%,睡眠時無呼吸の改善率はそれぞれ94.8%,68%であった.また,手術により上記以外の肥満関連疾患の治癒・改善率が50~90%に上ることが示されている.このことからQOLの改善と費用対効果が高い15),16)ことが証明されている.Ⅵ日本人2型糖尿病に対する外科治療日本人は欧米人と比較して,インスリン分泌能がきわめて低いことが指摘されている.したがって,日本人の2型糖尿病症例に対する外科治療戦略を考えるうえで,個々の2型糖尿病の病態を把握しておくことは重要である.すなわち,過剰な脂肪蓄積に伴うインスリン抵抗性が病態の本質で,インスリン分泌能が保たれている症例に対しては,摂取カロリーを制限することで体重減少を図る,よりシンプルな術式でも十分な効果が期待できる.一方で,インスリン分泌障害が病態の本質と考えられる症例に対しては,体重減少に加えて,インスリン分泌に直接働きかけるバイパス系の手術が効果的と考えられる.われわれは,インスリン治療中,C-ペプチド基礎値が低値,経口ブドウ糖負荷試験にてインスリン初期分泌能が低下,細小血管合併症(腎症,網膜症,神経障害)を発症しているなど,重症の2型糖尿病合併症例を中心に,腹腔鏡下スリーブ・バイパス術を行っている17),18).当院における糖尿病の臨床的治癒率は,胃バイパス術83%,スリーブ状胃切除術66%,胃バンディング術33%であるが,スリーブ・バイパス術は91%であり,残りの9%についても明らかな改善が得られた.スリーブ・バイパス術では術前インスリン使用患者が術後にインスリンから離脱できた率は100%であり,高い効果を示した.日本人の肥満2型糖尿病症例に対しても,外科治療は十分な抗糖尿病効果を有するものと考えられた.また,これらの糖尿病に対する改善は体重減少が起きるよりも早く現れ,これにはインクレチンなどの関与が考えられている.このため,糖尿病を手術によって治療するmetabolic surgeryという新たな分野も発展しつつある.参考文献1)Finucane MM, Stevens GA, Cowan MJ, et al;Global Burdenof Metabolic Risk Factors of Chronic Diseases CollaboratingGroup(Body Mass Index):National, regional, and globaltrends in body-mass index since 1980:systematic analysis76Current Therapy 2012 Vol.30 No.6558