カレントテラピー 30-6サンプル

カレントテラピー 30-6サンプル page 15/30

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肥満症の病態と治療に関する最近の知見―肥満症医療の新しい地平減量手術*笠間和典世界中で肥満の増加が問題となっており,日本もその例外ではない.しかし,肥満に対する外科治療は長期的にみると効果がほとんど期....

肥満症の病態と治療に関する最近の知見―肥満症医療の新しい地平減量手術*笠間和典世界中で肥満の増加が問題となっており,日本もその例外ではない.しかし,肥満に対する外科治療は長期的にみると効果がほとんど期待できない.減量手術とは肥満に対する外科治療であり,その目的は肥満関連疾患の改善,QOLの改善であり,美容を目的とはしない.減量手術は重症肥満に対する長期的な効果が唯一証明されている治療方法であり,費用対効果も高く,QOLの改善も証明されている.世界中で年間34万件以上も行われている一般的な手術であるが,本邦では大きく立ち後れている.また,手術により高い率で糖尿病,高血圧,脂質異常症,睡眠時無呼吸などが“治癒”することがわかってきている.特に糖尿病は減量が起こる前に改善を示すことが知られており,重症肥満を対象としないメタボリックサージェリーという考え方が出てきている.Ⅰはじめに近年日本人にも肥満が増え,それに伴いメタボリックシンドロームに対する注目も高まっている.2003年には世界保健機関(WHO)が,世界中で17億人が太り気味(BMI 25以上)であり,3億人が肥満(BMI 30以上)であるとして,肥満を近代世界の疫病であると位置づけた.その後,世界中で肥満者は増え続け,2008年には5億人を超えた1).米国では肥満が原因で年間40万人が死亡しているという状況であり,予防できうる死亡原因の第2位となっている.肥満症の治療の中心は,食事制限,運動療法などの内科的治療であるが,病的肥満症例の内科的治療は,長期的にみるとほとんどの患者がリバウンドを起こし,治療前の体重まで戻ってしまうといわれている2).そのため1960年代から米国を中心に,病的肥満に対する外科治療が行われてきた.最近では腹腔鏡下手術の発達により,年間に米国だけで23万件,世界中で34万件以上行われており,年々手術件数が著しく増加している3).Ⅱ病的肥満に対する外科治療とはここでいう肥満手術には脂肪吸引は含まない.脂肪吸引は術後合併症の軽減に寄与することもなく,病的肥満症例にはほとんど意味のないものである.脂肪吸引手術は美容のための手術だが,減量手術は,美容のためではなく合併疾患の改善および生活の質(QOL)の向上,延命効果を目的とした胃の縮小を伴う手術と定義されている4).*四谷メディカルキューブ減量外科センター長Current Therapy 2012 Vol.30 No.655573