カレントテラピー 30-6サンプル

カレントテラピー 30-6サンプル page 11/30

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肥満症の病態と治療に関する最近の知見―肥満症医療の新しい地平ネスファチン1と摂食調節:臨床応用への可能性を巡って*1*2岡田秀一・森昌朋ネスファチン1は,ネスファチンから形成される摂食抑制物質である.レプ....

肥満症の病態と治療に関する最近の知見―肥満症医療の新しい地平ネスファチン1と摂食調節:臨床応用への可能性を巡って*1*2岡田秀一・森昌朋ネスファチン1は,ネスファチンから形成される摂食抑制物質である.レプチン抵抗性を有する肥満動物モデルにおいてもその作用を発揮し,レプチン抵抗性を示すヒト肥満患者においてもネスファチン1の効果が期待できるのではないかと推測されている.本稿においては,ネスファチンとネスファチン1の違い,ネスファチン1の作用部位,ヒトにおけるこれまでのネスファチン1に関する報告をリストアップし,ネスファチン1の臨床応用に向けての展望について記載を試みた.なお,動物実験に基づく内容とヒトサンプルに基づく内容を,極力明確に分けるように記載をした.相反する報告がなされている研究結果については,その旨明記した.ネスファチン1への理解が進み,興味をもたれる方がさらに増えて,ネスファチン1の臨床応用へと研究を発展させていただければ幸甚である.Ⅰネスファチンとネスファチン1ネスファチン1は,2006年に大井らによって,チアゾリジン誘導体であるトログリタゾンをヒト肺癌由来のSQ -5細胞の細胞培養液中へ添加し,発現が増加する遺伝子群のなかから,新規の摂食抑制分子として単離されたペプチドである1).実は,ネスファチン1には,ヌクレオビンディン2(ネスファチン)という前駆体が存在する.ヌクレオビンディン2は420個のアミノ酸より構成されている.ネスファチン1は,プロホルモン変換酵素によりネスファチンのK83R84の箇所がプロセッシングを受け,その結果としてcleave offされたN端の82個のアミノ酸からなるペプチドである(図)1).Ⅱネスファチン1の摂食抑制作用(その1)大井らは,ラット第三脳室へのネスファチン1の急性投与により,暗期における摂食が抑制されること,慢性持続投与により継続的な摂食量の抑制と体重増加の抑制が認められること,morpholino oligoantisenseの第三脳室への持続投与により,視床下部における内因性のネスファチンの発現が抑制されるとともに,摂食量の増加を伴った体重増加が出現すること,ネスファチン1の切断部位であるK83R84をA83A84へ置換し,ネスファチン1を形成できない変異型ネスファチンの第三脳室への投与では,摂食行動に変化がみられないこと,からネスファチンではなくネスファチン1を新規の摂食抑制分子として報告した1).*1群馬大学医学部附属病院肝臓代謝内科講師*2群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学教授Current Therapy 2012 Vol.30 No.649513