カレントテラピー 30-5 サンプル

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大腸癌の診療―標準治療から最新治療まで大腸癌と癌幹細胞大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学講師山本浩文土岐祐一郎大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授森正樹大阪大学大学院医学....

大腸癌の診療―標準治療から最新治療まで大腸癌と癌幹細胞大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学講師山本浩文土岐祐一郎大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授森正樹大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授1はじめに癌幹細胞は1994年に急性骨髄性白血病で初めて同定され,大腸癌などの固形癌でも同様の概念が提唱されている.癌幹細胞の特徴として1ごく少数であり,これら少数の細胞のみが腫瘍形成能を有する,2自己複製する一方で,非対称性分裂を行い分化した癌細胞を生み出す,という2点が挙げられる.癌幹細胞説によると,癌における細胞性質の多様性(heterogeneity)についても理解しやすい.2癌幹細胞の同定法癌幹細胞を同定する方法としてはsidepopulation(SP)分画を用いる方法や,表面マーカーを用いる方法などがある.1)SP分画を用いる方法癌幹細胞は細胞内の薬剤を排出するATPbinding cassette(ABC)トランスポーターを有する.Hoechst色素を細胞内に取り込ませ,ベラパミルなどのABCトランスポーター阻害剤を用いて薬剤の排出能力をフローサイトメトリーで解析し,SP分画を抽出する.一方,SP細胞は抗癌剤抵抗性をもち,免疫不全マウスにおける腫瘍形成能が高い.2)大腸癌幹細胞の細胞表面マーカー細胞表面マーカーは,癌幹細胞の同定法として最も一般的な方法である.細胞膜上に存在する表面タンパクをマーカーとしてフローサイトメトリーで解析する手法である.? CD133+細胞CD133(prominin -1)は造血系および神経系の幹細胞マーカーであり,大腸癌以外でも白血病,脳腫瘍などの癌幹細胞マーカーとして知られている.大腸癌組織よりCD133+細胞集団を分離してNOD/SCIDマウスの腎被膜下移植を行うと,CD133+細胞が高い造腫瘍能を有する.また,末梢血中のCD133mRNAを測定することにより,大腸癌の再発予測ができるとの報告もある.一方でCD133は様々な臓器で幹細胞以外の細胞にも発現していることから癌幹細胞特異的という点については否定的な見方も少なくない.? CD44+細胞CD44はヒアルロン酸の受容体であり,細胞-細胞間,細胞-細胞外基質間の相互作用をつかさどり,オステオポンチンやコラーゲン,マトリックスメタプロテアーゼ(MMPs)などのリガンドとしても作用し,細胞の増殖や移動に重要な役割を果たす.また,10種類ほどのsplicing variantが存在し,癌においてはCD44v6などが予後や転移と相関する.?その他の表面マーカーCD44+細胞の中でも特にアルトアルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase 1:ALDH1)陽性細胞は腫瘍形成能が高い.その他,大腸癌で報告されている幹細胞と関連する表面マーカーとしてCD24,CD166,CD29,EpCAM,CD26,EphB2などが挙げられる.88Current Therapy 2012 Vol.30 No.5462