カレントテラピー 30-5 サンプル page 12/38
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概要:
大腸癌の診療―標準治療から最新治療まで結腸癌の外科治療***金光幸秀・小森康司・木村賢哉癌治療は外科,放射線治療,化学療法の三本柱からなる.最近ではこれを多科目の連携治療という意味で,multidisciplinar....
大腸癌の診療―標準治療から最新治療まで結腸癌の外科治療***金光幸秀・小森康司・木村賢哉癌治療は外科,放射線治療,化学療法の三本柱からなる.最近ではこれを多科目の連携治療という意味で,multidisciplinary approachともいう.そのなかでは,化学療法の急速な進歩がもたらされ,進行再発癌においては今や20カ月以上の生存期間が得られるようになったのは周知の事実である.しかし,その進歩もここにきていよいよ律速段階にさしかかった感がある.このような現況においても,なお大腸癌治療成績を向上させるためには,局所治療としての外科治療が以前にも増して重要になってくる.世界各国の大腸癌患者生存率を比較したデータによると,日本の成績はトップレベルであり,これには大腸癌研究会によって『大腸癌取扱い規約』が提示され,根治性を重視する一貫した姿勢が保たれてきたことも背景のひとつと思われる.今後は,そのような外科治療の効果を自覚し,かつ日本の実情に即した再評価を加えていくことが期待される.本稿では現状における結腸癌の外科治療について,最新の知見に基づきながら解説する.Ⅰはじめに大腸癌は,米国における罹患数が年間14万件以上で3番目に多く,死亡者数は5万3千件以上で癌による死因の第2位である1).同様に,日本においても3番目に罹患数が多く,癌死の原因の第1位であり,年間10万件以上の新規症例と3万6千件以上の死亡例がある2).このように世界的にも罹患数の多い大腸癌であるが,世界各国の地域がん登録のデータを解析したCONCORD 3)研究や経済協力開発機構(OECD)のデータ4)によって,日本の大腸癌患者の生存率は世界でもトップレベルの成績であることが明らかになった.限局性の大腸癌患者に最も効果の高い治療は外科的切除であり,海外と比べて良好な日本の生存率を下支えしていることに疑いの余地はない.大腸癌研究会全国登録によると,大腸癌の発生部位としては,「結腸および直腸S状部」:「上部直腸」:「下部直腸」の比が20:4:5となっている.本稿では罹患比率の高い結腸癌の外科治療に関して,最新の知見を含め解説したい.Ⅱ待機手術における機械的腸管前処置大腸癌手術における機械的腸管前処置(mechanicalbowel preparation:MBP)は,術後合併症の予防,とりわけ手術部位感染症(surgical site infection:SSI)の予防に有用とされ,米国疾病管理予防センター(CDC)ガイドライン5)においても推奨されている.推奨の理論的根拠としては,SSI発生の起因菌が腸内細菌に由来することから,SSI予防*愛知県がんセンター中央病院消化器外科部医長Current Therapy 2012 Vol.30 No.540531