カレントテラピー 30-4サンプル page 9/28
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表2 NIA-AAによる軽度認知障害(MCI)の診断基準およびアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI due to AD)の研究基準A軽度認知障害(MCI):中核臨床診断基準1.臨床症候群としての定義A.以前と比較して認知機能....
表2 NIA-AAによる軽度認知障害(MCI)の診断基準およびアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI due to AD)の研究基準A軽度認知障害(MCI):中核臨床診断基準1.臨床症候群としての定義A.以前と比較して認知機能の低下がある.これは本人,情報提供者,熟練した臨床医のいずれによっても指摘され得る.B.記憶,遂行機能,注意,言語,視空間認知のうちひとつ以上の認知機能領域における障害がある.C.日常生活動作は自立している.昔よりも時間を要したり,非効率であったり,間違いが多くなったりする場合もある.D.認知症ではない.2.認知機能の特徴下記に挙げるような認知機能テストにおいて,典型的には年齢・教育歴の一致した正常群と比較して1?1.5 SD下回る.・エピソード記憶:Free and Cued Selective Reminding Test, Rey Auditory Verbal Learning Test, California VerbalLearning Test, WMS -RのLogical memoryⅠ&Ⅱ, WMS-RのVisual reproductionⅠ&Ⅱ・遂行機能:Trail Making Test・言語:Boston Naming Test, letter and category fluency・視空間認知機能:図形模写・注意:digit span forwardこれらのような検査ができない場合は,「住所・名前」を覚えさせる,あるいは3物品の名称を答えさせ隠した後にどこになにを隠したかを答えさせることによって記憶の評価は可能だが,感度は劣る.3.臨床的にアルツハイマー病によるMCIが疑われるもの1.を満たし,かつ下記を認めるa.レヴィー小体型認知症や前頭側頭認知症を疑う症状が目立つ症例ではない.急速に進行する認知機能低下ではない.認知機能低下を起こす血管障害,外傷,合併症や薬物の使用が除外できる.b.長期的に認知機能低下の証拠がある.c.常染色体優性遺伝形式のアルツハイマー病の家族歴がある.APP,PSEN1,PSEN2の変異がある.d.APOEε4保因者である.Bアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI due to AD):バイオマーカーを取り入れた研究基準臨床的にMCIと診断された症例は2種類のバイオマーカーによって下記のように分類される.1.臨床的にMCIである(MCI-core clinical criteria)バイオマーカーは未検査である.あるいはバイオマーカーは陰性とも陽性ともいえない.あるいはAβバイオマーカーは陽性であるが,神経変性バイオマーカーは陰性である.あるいは神経変性バイオマーカーは陽性であるが,Aβバイオマーカーは陰性である.2.ADによるMCIの可能性が高い(MCI due to AD-high likelihood)Aβバイオマーカーと神経変性バイオマーカーがいずれも陽性である.3.ADによるMCIの可能性が中等度である(MCI due to AD-intermediate likelihood)Aβバイオマーカーは陽性であるが,神経変性は未検査である.あるいは神経変性バイオマーカーは陽性であるが,Aβバイオマーカーは未検査である.4.ADによるMCIの可能性が低い(MCI unlikely due to AD)Aβバイオマーカーと神経変性バイオマーカーがいずれも陰性である.そこで,バイオマーカーや神経心理所見のなかで正常認知機能からMCIやAD dementiaに進行する危険性の高い因子を定めた提言を作成するため国際的ワークショップを立ち上げ,現在までの科学的根拠に基づいた発症前段階のADの概念的枠組みと操作研究基準を提案した9).この提言は,現時点では縦断的臨床研究によって改訂される余地のある研究目的のものであり,臨床的な意義はもたない.Preclinical ADは,AD病理の兆候を示唆するバイオマーカーが陽性であり,認知機能は全く正常な12Current Therapy 2012 Vol.30 No.4296