カレントテラピー 30-4サンプル

カレントテラピー 30-4サンプル page 6/28

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概要:
の診断基準は1他の認知症〔例えばレヴィー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)や血管性認知症など〕との鑑別があいまいであり,多くの症例で複数の病理学的変化のオーバーラップを考慮しなければならな....

の診断基準は1他の認知症〔例えばレヴィー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)や血管性認知症など〕との鑑別があいまいであり,多くの症例で複数の病理学的変化のオーバーラップを考慮しなければならない,2認知症に至らない軽症例は基準に満たない,3疾患特異的なバイオマーカーの記載がない,といった問題があり,創薬・研究・診療において限界の声が上がった2)?4).このような問題を解決すべく,2011年に米国立老化研究所とアルツハイマー病協会(NIA -AA)は病理学的変化を反映するバイオマーカーを取り入れた改訂版診断基準を設定した.この診断基準はADによる認知症(AD dementia),ADによる軽度認知障害(MCI due to AD),発症前段階のAD(preclinicalAD)の3つの項目からなる.Ⅱアルツハイマー病による認知症(AD dementia)まず原因を問わず認知症について定義する必要がある.表1-Aに示したなかで,「仕事や日常生活動作において能力が障害される」かどうかで認知症とMCIが鑑別される.この診断は熟練した臨床医によってなされる臨床診断である5).ADによる認知症(AD dementia)は臨床症状に基づく診断基準である「ほぼ確実(Probable)」と「疑わしい(Possible)」(表1-B),バイオマーカーを取り入れた診断基準である「アルツハイマー病の病態生理変化の兆候を伴うほぼ確実/疑わしい」(表1-C)の3つに分けられる5).NINCDS -ADRDA基準によるProbable AD症例は新診断基準のProbable ADdementiaを満たす.そのうち,進行が確認された症例,およびAD病因遺伝子PSEN1,PSEN2,APPの変異を伴う症例については診断の確実度が増す.一方,NINCDS-ADRDA基準によるPossible AD症例は必ずしも新診断基準のPossible AD dementiaを満たさない.この違いはNINCDS -ADRDA基準では認知機能の障害領域がひとつである症例も含まれるためである.「アルツハイマー病の病態生理変化の兆候を伴う」の項目は,AD病理および病期を反映するバイオマーカーを取り入れた新診断基準の特徴である.ここで用いられるバイオマーカーは2つの要素に分けられ,AD病理変化において最初に出現するAβ沈着を反映するものとして髄液Aβ42低値,amyloidPET陽性がありAβ沈着に続く変化である神経変性を反映するものとして髄液タウやリン酸化タウ(リン酸化タウのほうがより特異性が高い)や,FDG -PETで側頭頭頂葉における取り込み低下,MRIでの側頭葉と頭頂葉内側の不均衡な萎縮が用いられる.「アルツハイマー病の病態生理変化の兆候を伴うほぼ確実」の分類は,臨床診断基準の「ほぼ確実」を満たし,かつバイオマーカーが陽性なものを指す.バイオマーカーは2つの要素の両方陽性なもの,片方のみ陽性なもののいずれもあり得る.バイオマーカーの導入により,診断の確からしさは増すと考えられる.しかし1中核診断基準のみで非常に高い診断精度があり有用であること,2診断基準にバイオマーカーを用いるにはさらなる研究が必要であること,3バイオマーカーの標準化が難しいこと,4バイオマーカーの測定できる施設が限られることから,診断過程においてルーチンにバイオマーカーを用いることは推奨しておらず,研究,治験の際に有用であろうと考えられている.「アルツハイマー病の病態生理変化の兆候を伴う疑わしい」の分類は臨床的には非AD dementiaだが,ADバイオマーカーあるいは病理所見が陽性となったものを指す.この分類には,例えば臨床的にはDLBだが剖検脳でAD病理が証明されたものなどが含まれる.ただし,バイオマーカーを用いる場合はAβ沈着と神経変性の両方の要素が陽性な症例のみを指す.新診断基準の問題点として,特に画像バイオマーカーにおいて,バイオマーカーの基準化が難しくカットオフ値を設けていないことが挙げられ,基準が設けられるまでは慣行例に従うしか手段がない.またこれまでの研究から,病理変化同様Aβバイオマーカーが異常となった後に神経変性バイオマーカーが異常となると考えられているが6),診断基準に取り入れられた複数のバイオマーカーが変化するCurrent Therapy 2012 Vol.30 No.42939