カレントテラピー 30-4サンプル page 5/28
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アルツハイマー病―先制医療に向けての展開アルツハイマー病協会/NIAによる新しい診断ガイドライン*1*2井原涼子・岩田淳NINCDS-ADRDAによりアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の診断基準が作られたのは....
アルツハイマー病―先制医療に向けての展開アルツハイマー病協会/NIAによる新しい診断ガイドライン*1*2井原涼子・岩田淳NINCDS-ADRDAによりアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の診断基準が作られたのは1984年のことだが,その後25年余りの間にAD研究は目覚ましい進歩を遂げた.旧診断基準では疾患特異的なバイオマーカーがなく他の認知症疾患との鑑別が困難なこと,認知症の前段階については全く考慮されていないという欠点があった.これまでの研究成果を反映し,2011年NIA-AAにより,髄液Aβやamyloid PETといったAβ沈着を反映するバイオマーカー,髄液タウ,MRI,FDG PETといった神経変性を反映するバイオマーカーを診断基準に取り入れた,ADによる認知症(AD dementia),ADによる軽度認知障害(MCI due to AD),発症前段階のAD(preclinical AD)についての新しい診断基準が設定された.旧診断基準では不可能であった病理学的変化を反映した診断が新診断基準では可能となり,今後早期診断・早期治療に活かされると考えられる.Ⅰはじめに1984年に米国立神経疾患・脳卒中研究所とアルツハイマー病・関連障害協会(NINCDS -ADRDA)によるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)診断基準が設定された1).この診断基準のなかでは,ADは臨床徴候と病理所見がよく対応するとの想定の下,臨床病理学的疾患単位として定義されている.また,CTで進行性の脳萎縮を認めるという項目のほかは,臨床診察所見や神経心理学的評価のみにより「ほぼ確実」あるいは「疑わしい」ADの診断がなされ,病理学的に確認されたときに「確実」の診断となっていた.1984年というと,臨床の現場では0.2T MRIが発売され始めたころで,現在のように一般的ではなかった時代である.それから25年余りの間に,AD研究においては家族性AD家系からアミロイド前駆体タンパク(amyloidprecursor protein:APP)やプレセニリン(presenilin:PSEN)がクローニングされ,病理学的にはタウ病理よりもamyloidβ(Aβ)の沈着が先に起こることが発見されたため,アミロイドカスケード仮説が真実らしいと考えられるようになった.また,その病態の解析からAD病理を反映する生化学的あるいは神経画像バイオマーカーが発見され,神経心理学的所見・病理学的所見についてもより深い洞察がなされてきた.この結果,軽度認知障害(mildcognitive impairment:MCI)の概念が生まれ,より早期の段階で介入して根本治療を試みようという流れが生まれた.このように,ADの臨床病理連関が詳細に明らかになってきた現在においては,NINCDS -ADRDA*1東京大学大学院医学系研究科神経内科学特任助教*2東京大学大学院医学系研究科分子脳病態科学特任准教授8Current Therapy 2012 Vol.30 No.4292