カレントテラピー 30-4サンプル page 4/28
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アルツハイマー病―先制医療に向けての展開―企画東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授岩坪威エディトリアル間断ない人口の高齢化に伴い,認知症に苦しむ人の増加は,世界的な問題となりつつある.なかでも....
アルツハイマー病―先制医療に向けての展開―企画東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授岩坪威エディトリアル間断ない人口の高齢化に伴い,認知症に苦しむ人の増加は,世界的な問題となりつつある.なかでも,高齢者認知症の原因の大多数を占めるアルツハイマー病(AD)への対応が急がれている.本特集では,ADの基礎研究から臨床,治療薬開発まで,最前線で活躍されている先生方に,最新の動向についてご執筆いただくことができた.頂戴した原稿を通覧し,疾患メカニズムに即した“疾患修飾療法”の実用化には,バイオマーカーを駆使した超早期の診断と,症候の顕在化を待たずして背景病変に介入し,神経回路障害を水面下に食い止める「先制医療」的アプローチが必須,という点において専門家の意見が一致していることに,改めて思いを強くした.米国においては2011年,オバマ大統領が“National Alzheimer’s Project Act(NAPA)”法案に署名し,AD克服のための国家計画を立案・維持することが保健福祉省長官に対し正式に命令された.計画には,すべての国家機関におけるAD研究と施策を横断的にコーディネートすること,ADの進行を予防,防止あるいは回復させる治療法の開発を促進すること,早期診断を向上させケアと治療の協調を図ること,そして地球規模でAD克服に向けての国際協力を推進すること,などが盛り込まれている.本邦でも動きがあった.2012年度の科学・技術重要施策アクションプランの対象施策として「認知症の発症と進展に係るマーカー及び画像による評価指標の開発と,それに基づく早期診断,根本的治療薬の開発促進」が採択され,その中核施策としてJ -ADNI研究の推進と,その成果に基づくADNI方式のAD根治薬の治験推進が謳われている.さらに2011年度から厚生労働省により「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」が開始された.このプロジェクトは,わが国のアカデミアを中心に,画期的治療薬を初めてヒトに適用し,薬効コンセプトの証左を得る早期フェーズの治験を推進しようとする画期的な研究施策であるが,その一つとして,ADなどの認知症の疾患修飾療法の治験実行を主目的とする提案が採択された.この動きは,ADの先制医療実現に向けての力強い第一歩と申せよう.このように,基礎研究の成果を治療研究に統合し,脳神経系に不可逆的な障害が生じる前に,ADの進行を食い止めようとする「先制医療」の実現に向けて,総力を結集すべき機が熟しつつある.本特集から,AD克服に向けてのストラテジーと,機運を汲み取っていただければ幸いである.Current Therapy 2012 Vol.30 No.42917