カレントテラピー 30-4サンプル page 24/28
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概要:
ADNIとJ-ADNI東北大学加齢医学研究所老年医学分野准教授古川勝敏ADNIとはAlzheimer’s Disease NeuroimagingInitiativeの略称であり,米国で2005年に開始されたアルツハイマー病(Alzheimer’sdisease:AD)の集約的....
ADNIとJ-ADNI東北大学加齢医学研究所老年医学分野准教授古川勝敏ADNIとはAlzheimer’s Disease NeuroimagingInitiativeの略称であり,米国で2005年に開始されたアルツハイマー病(Alzheimer’sdisease:AD)の集約的多施設合同縦断プロジェクトである.ADNIはカリフォルニア大学サンフランシスコ校の放射線科医Dr.Michael Weinerの発案により,全米の50以上の施設が参加し始められた.ADの病理変化は病気の発症より数十年前から始まっていると考えられており,発症前診断を含む早期の診断,さらには病態の把握,治療の効果判定のためにはADのより正確なバイオマーカーが必須である.ADNIの最大の目的は,多施設の縦断研究によりADのバイオマーカーの変化を発症前より正確に把握し,今後実用化されてくるADの根本治療薬の評価の基礎を確立することである.検査項目は各種の神経心理検査,MRI,PET(FDGおよびアミロイド),血液および脳脊髄液中のアミロイドβタンパク質,タウなどの化学物質,が含まれる.ADNIは米国にとどまらず,欧州,豪州(Australian Imaging Biomarkers&LifestyleFlagship Study of Ageing:AIBL)でも展開されている.日本では東京大学の岩坪威教授がリーダーとなり,2008年よりJapanese-ADNI(J -ADNI,アルツハイマー病の克服をめざす全日本臨床研究)が開始された.J -ADNIは主に経済産業省(NEDO)と厚生労働省から運営資金が供出され,それに加え多くの企業が資金援助をしている.ADNIおよびJ -ADNIからはすでに多数の論文が発表され,プロジェクトは高く評価されている.いくつかの報告を集約すると,MRIによる脳萎縮の定量は,ADの進行,治療の評価といった「outcome」として有用である.一方アミロイドPETや脳脊髄液のケミカルマーカー(Aβ,タウ)は,認知機能低下や認知症発症の「predictor」として有用であることが明らかになってきた.米国では最初のADNIは終了したが,ADNI -GO,ADNI -2とmodifyされたものが継承されており,日本では最初のJ -ADNIが現在も継続中である.今後もADNI,J-ADNIの継続により,ADの研究および治験の根幹となるエビデンスの構築が期待されている.74Current Therapy 2012 Vol.30 No.4358