カレントテラピー 30-4サンプル page 15/28
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アルツハイマー病研究の最前線AB(%)14Aβload1210864201234567891011SectionGroup 1 WtGroup 1 TgGroup 2 WtGroup 2 TgGroup 3 WtGroup 3 Tg図2伝播した脳βアミロイドーシスの個体内での拡がりA:脳ホモジネート....
アルツハイマー病研究の最前線AB(%)14Aβload1210864201234567891011SectionGroup 1 WtGroup 1 TgGroup 2 WtGroup 2 TgGroup 3 WtGroup 3 Tg図2伝播した脳βアミロイドーシスの個体内での拡がりA:脳ホモジネートを3カ月齢で脳へ注入し,12カ月後に評価した(Group 3 Tg).両側海馬とその上層の皮質に少量(3.5μL)の脳ホモジネートを注入したところ,12カ月後には注入した部位のみだけでなく,海馬および大脳皮質全体にAβ沈着が拡がった.B:前頭部より脳を25μmで冠状断に切り,12スライスごとにAβ沈着の程度を評価した.Wtマウスの脳を注入したマウスではほとんどAβ沈着を認めなかった.Tgマウス脳を注入した群では,6カ月後に評価した群では海馬とその近傍にAβ沈着が限局しているが(Group 1Tg,Group 2 Tg),12カ月後に評価した群ではAβ沈着が脳全体に拡がっていた(Group 3Tg).〔参考文献23)より引用改変〕内接種すると,285日後には脳にAβ沈着を認めた24).また,接種450日後まではthioflavin S陽性のAβ沈着ははっきりしないが,585日後にはthioflavinS陽性のAβ沈着を認めるようになった24).この報告によって,プリオン病と同様に,脳βアミロイドーシスの個体間伝播には遺伝子変異は必要ないことが示された.Ⅴマウス以外の動物を用いた脳βアミロイドーシス伝播の試みこれまでマウスを用いた実験について述べてきたが,マウス以外の動物を用いた研究報告も存在する.ひとつは人間と同じ霊長類であるマーモセットを用いた研究で,脳内にAD患者の脳ホモジネートを接種後3年5カ月経過したすべてにおいて脳にAβ沈着を認めたと報告されている25).さらに,最近筆者を含むグループは,APP遺伝子改変ラットでもマウスと同様に個体間の伝播が成立することを報告した26).ⅥヒトでのADの個体間伝播これまでのところ,実際の医療行為などによるヒトでの脳βアミロイドーシスの伝播の報告はない.しかし,脳βアミロイドーシスがプリオン病と同様に個体間で伝播する可能性があるとした場合,今後,医療行為や食品によるADの伝播は無視できない問題となってくる.現在までに,過去に受けた医療行為とAD発症の相関について検討した症例対照研究27)?29が輸血歴)30,全身麻酔下での脊椎手術),冠動31脈バイパス手術)32,全身麻酔)などについて行われているが,いずれの医療行為もADの独立した危険因子としては見いだされていない.しかし,上記のような動物実験の結果からは,プリオン病と同様に医療行為によってヒトからヒトへ伝播している可能性は否定できず,今後もさらに大規模な調査研究が必要である.Current Therapy 2012 Vol.30 No.433955