カレントテラピー 30-3 サンプル

カレントテラピー 30-3 サンプル page 8/34

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疫学と病態と診断心筋梗塞*p<0.05脳梗塞*33*発2症率1HighTG発2症率1High TGLow TGLow TG0High non-HDLC Low non-HDLC0High non-HDLC Low non-HDLC図3トリグリセリドとnon-HDLコレステロールで層別化した場合の心....

疫学と病態と診断心筋梗塞*p<0.05脳梗塞*33*発2症率1HighTG発2症率1High TGLow TGLow TG0High non-HDLC Low non-HDLC0High non-HDLC Low non-HDLC図3トリグリセリドとnon-HDLコレステロールで層別化した場合の心筋梗塞と脳梗塞の発症リスク(吹田研究):約5千人の12年追跡トリグリセリド(TG),non -HDLコレステロール(non -HDLC)が両方低い群を参照群(リスク1)としたときの相対危険度を示す.カットオフ値はTG=150mg/dL,non -HDLC=190mg/dL.性,年齢,収縮期血圧値,糖尿病,HDLコレステロール,ウエスト周囲径,喫煙,飲酒を調整.〔参考文献13)より引用改変〕究の報告として,大阪の勤務者6,500人を8年間追跡した成績が示されている14).TC,HDLCをそれぞれ220mg/dL,55mg/dLで区分して4群に分けた場合,虚血性心疾患の発症率はTCが高めでかつHDLCが低めの群で非常に高くなっていた.この関係は,高血圧や喫煙など他の危険因子を調整しても認められている.HDLCは内外の多くのコホート研究で心血管疾患の防御因子として示されているが,HDLCを選択的に上昇させる薬剤がないこともあり,臨床試験での評価はほとんどなされていない.Brielらは,LDLCまたはTCの低下をターゲットとして実施された108の無作為化比較対照試験をメタアナリシスし,HDLCの変化と心血管疾患は関連せず最も重要なのはLDLCの低下であることを報告した15).しかしこのメタアナリシスに用いた研究のうち過半数はスタチンを用いてLDLCを低下させた研究であり,どの研究でもHDLCの上昇はわずかであった.スタチンを用いた研究ではあくまでLDLC低下が主目標であり,HDLCの上昇は副次的な評価指標である.したがって,このメタアナリシスの結果からHDLCを上昇させてもあまり意味がないと考えるのは時期尚早である.5脳卒中と脂質異常症脳卒中は,病理学的な成因別に複数の病型に分けられる.代表的なものとしては,1脳内出血,2くも膜下出血,3ラクナ梗塞,4アテローム血栓性梗塞(粥状動脈硬化による),5心原性塞栓,の5種類があり,3?5は通常,脳梗塞として一括される.日本人集団におけるコホート研究で,TCと脳卒中が有意な正の関連を示した報告はない.久山町研究では,脳卒中のうちアテローム血栓性梗塞のみ,高LDLCがリスクになることが明らかとなった10).一方,脳内出血は低コレステロール血症者に多発する16).心原性塞栓は心房細動,ラクナ梗塞は高血圧との関連が特に強く,脂質異常症の影響はあまり大きくない.むしろ心原性塞栓はLDLCが低い群から発症しやすいことが同じ久山町研究で示されている10).日本人集団では白人集団に比べて脳内出血とラクナ梗塞の割合が高く,60%程度を占める.アテローム血栓性梗塞は10%程度である.したがってすべての病型を合わせた脳卒中とTCとの関連を解析すると,影響がないという結論に至るため注意が必要である.Ⅳコレステロールと総死亡についてNIPPON DATA80でTC値と総死亡の関連を解析する際,単純にTCを層別化して解析すると,基準群(160?179mg/dL)に比べて,260mg/dL以上群と160mg/dL未満群の両端で有意に高いU字型の関連を示した.これは既存の国内の多くのコホート研Current Therapy 2012 Vol.30 No.319111