カレントテラピー 30-3 サンプル

カレントテラピー 30-3 サンプル page 28/34

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脂質異常症の遺伝子治療千葉大学医学部附属病院未来開拓センター特任准教授黒田正幸千葉大学大学院医学研究院臨床遺伝子応用医学教授武城英明遺伝子異常を伴う脂質異常症に薬剤治療の効果を期待することは難しいこと....

脂質異常症の遺伝子治療千葉大学医学部附属病院未来開拓センター特任准教授黒田正幸千葉大学大学院医学研究院臨床遺伝子応用医学教授武城英明遺伝子異常を伴う脂質異常症に薬剤治療の効果を期待することは難しいことが多く,その根治療法として遺伝子治療が期待されてきた.さらに,脂質異常が続発性に引き起こされる場合でも応用できる可能性がある.このなかで代表的な原発性脂質異常症である家族性高コレステロール血症とリポタンパクリパーゼ(lipoprotein lipase:LPL)欠損症,家族性レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(lecithin cholesterol acyltransferase:LCAT)欠損症の遺伝子治療の現況について紹介する.家族性高コレステロール血症ホモ接合体患者に対してLDLアフェレーシス療法が行われ多大な成果を上げてきた.一方,今なお重症例では治療に難渋する.1990年代に,患者から切除して培養した肝細胞へレトロウイルスベクターによりLDL受容体遺伝子をexvivo導入し,それを移植することによる遺伝子治療臨床試験が行われた1),2).LDL受容体遺伝子発現によるLDL -Cの低下効果が認められた.しかしながら,治療効果は患者によりばらつきが大きく負担も大きいことからその後は実施されていない1),2).現在はアデノ随伴ウイルスベクター(adeno -associatedvirus:AAV)による肝臓への直接導入を用いた基礎研究が進められている2).LPL欠損症患者はLPL活性の欠損により高カイロミクロン血症とともに,幼少期から重度の腹痛を伴う致死性の反復性急性膵炎を引き起こす.機能獲得型変異(S447X)が欧米,アジア人の2割に認められ遺伝子治療臨床試験に応用されている.すなわち,S447Xを発現するAAVを筋肉内に直接注入することで2.脂肪細胞の分離3.天井培養による培養脂肪細胞の調製1.脂肪組織の摘出6.LCAT産生脂肪細胞の自家移植4.レトロウイルスベクターによるLCAT遺伝子の導入5.LCAT遺伝子導入脂肪細胞の拡大培養図LCAT欠損症の遺伝子細胞治療84Current Therapy 2012 Vol.30 No.3264