カレントテラピー 30-3 サンプル page 22/34
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脂質異常症―日常診療に必要な知識をまとめよう脂質異常症治療薬の使い方*1*2*3小林俊介・原田太郎・及川眞一a b s t r a c t脂質異常症は動脈硬化性疾患の主要な危険因子のひとつであり,血清脂質の改善により冠....
脂質異常症―日常診療に必要な知識をまとめよう脂質異常症治療薬の使い方*1*2*3小林俊介・原田太郎・及川眞一a b s t r a c t脂質異常症は動脈硬化性疾患の主要な危険因子のひとつであり,血清脂質の改善により冠動脈疾患,脳卒中の予防,総死亡率の低下することが大規模臨床試験で示されている.脂質異常症の治療としてまず食事療法,運動療法による生活習慣の改善を行うが,十分な効果が得られない場合には薬物療法が考慮される.現在,脂質異常症に対する薬物療法としてはHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン),小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ),陰イオン交換樹脂(レジン),フィブラート,ニコチン酸誘導体,イコサペント酸エチル(EPA)などがある.治療の目標は血清脂質値の改善ではなく動脈硬化性疾患の予防であるので,患者の危険因子を評価しそれぞれの治療薬の特徴を理解したうえで適切な治療を行っていく必要がある.Ⅰ高LDL-C血症の治療1 HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)肝臓におけるコレステロール合成量は400?800mg/日である.生体内においてコレステロールはアセチル-CoAをもとに合成される.その過程のなかでHMG -CoAがHMG -CoA還元酵素によってメバロン酸となるが,この過程がコレステロール合成における律速段階であり,HMG -CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の作用部位である.スタチンはHMG -CoA還元酵素を競合阻害することで,メバロン酸生合成の阻害を介してコレステロール生合成を抑制する.肝細胞内のコレステロール含量が低下すると,sterol regulatory binding protein(SREBP)が活性化され,細胞表面へのLDL受容体発現が増加する.この結果,血中LDLコレステロール(LDL-C)の低下がもたらされる.現在,日本ではプラバスタチン,シンバスタチン,フルバスタチン,アトルバスタチン,ピタバスタチン,ロスバスタチンが承認されている.アトルバスタチン,ピタバスタチン,ロスバスタチンはLDL-Cの低下率が大きいことからストロングスタチンともいわれている.スタチンのエビデンスとしては1994年に発表された4S studyにおいてシンバスタチンの投与によりLDL -Cが35%低下し冠動脈疾患再発リスクが42%低下したこと1),1995年に発表されたWOS studyにおいてLDL -Cは26%低下し冠動脈疾患初発のリスクが31%低下したこと2)などが示されて以来,多くの大規模臨床試験が行われてきた.MEGA studyは日本人を対象とした心血管疾患発症の1次予防をエンドポイントとした試験であるが,プラバスタチンによりLDL - Cが18%低下し,心血管疾患発症が33%減少することが示された3).また海外の臨床試験ではあるがJUPITER studyではロスバスタチンにより55%のLDL -C低下と44%の心血管疾患発症*1日本医科大学付属病院内分泌代謝内科*2日本医科大学付属病院内分泌代謝内科助教*3日本医科大学付属病院内分泌代謝内科教授78Current Therapy 2012 Vol.30 No.3258