カレントテラピー 30-3 サンプル page 11/34
このページは カレントテラピー 30-3 サンプル の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
表1ガイドライン2007年版における脂質異常症の診断基準(空腹時採血)高LDL-C血症LDL -C≧140mg/dL低HDL -C血症HDL -C<40mg/dL高TG血症TG≧150mg/dLこの診断基準は薬物療法の開始基準を表記しているものではない.....
表1ガイドライン2007年版における脂質異常症の診断基準(空腹時採血)高LDL-C血症LDL -C≧140mg/dL低HDL -C血症HDL -C<40mg/dL高TG血症TG≧150mg/dLこの診断基準は薬物療法の開始基準を表記しているものではない.薬物療法の適応に関しては他の危険因子も勘案し決定されるべきである.LDL -Cは直接測定法を用いるかFriedewaldの式で計算する.(LDL -C=TC?HDL -C?TG/5(TGが400mg/dL未満の場合))TGが400mg/dL以上の場合は直接測定法にてLDL -Cを測定する.〔参考文献1)より引用改変〕げられる.これは,高脂血症という表現が重要な脂質異常である低HDLコレステロール(HDL -C)血症を含む表現としては適切ではないこと,および近年諸外国で使用されるようになった「dyslipidemia」の記載と整合性を保つために行った変更である.さらに脂質異常症の診断基準も含め,TC値に関する記載を割愛し,LDLコレステロール(LDL -C)が管理の主目標たることをより一層明瞭な形で提示したことが挙げられる.これに伴い脂質異常症の診断基準値はLDL -C値140mg/dL以上,トリグリセライド(triglyceride:TG)値150mg/dL以上とHDL -C値40mg/dL未満と再定義された(表1).しかし,高脂血症という呼称をなくしたわけではなく,「高コレステロール血症」と「高TG血症」を併せて「高脂血症」と称することは問題ないともしている.むしろ,脂質異常症という疾患概念のなかに高脂血症や低脂血症が含まれると考えるほうが妥当であると思われる.さらに近年,単なるTC値やTG値ばかりでは表現できないリポタンパク異常,特にレムナントやsmall dense LDLなどが動脈硬化性疾患ときわめて関係が深いことが明らかになり,これらの脂質異常病態も念頭に置いたものと理解すべきであろう.ここで問題となるのが,これらの脂質異常がわが国の動脈硬化性疾患と実際に関連するのかという点であるが,図1に示したように,TCが上昇するとCADによる死亡率が高くなり,TGの上昇,HDL-Cの低下に応じてCADの発症率が上昇することはわが国のデータでも明らかになり,欧米のデータとよく一致することがわかってきた3)?5).また大規模疫A総コレステロール値と冠動脈疾患死亡の相対危険度(男女)NIPPON DATA 804相対3危険2度10B HDLコレステロール値と冠動脈疾患合併率(%)冠動脈疾患合併率543210Cトリグリセライド値(随時)と冠動脈疾患発症の相対危険度(男女)相対危険度43210~159~34 35~39160~17940~44180~19945~4950~54200~21955~5960~64220~23965~69240~260~259(mg/dL)70~7475~79(mg/dL)~8485~115116~164165~(mg/dL)図1血清脂質値と冠動脈疾患の関係〔参考文献1),3)?5)より引用改変〕学調査であるNIPPON DATA80の詳細な結果も明らかになった3).しかしながら,それぞれの診断における基準値をどのように決定するかということになると,明確な線引きは必ずしも容易ではなく,最終的には専門家のコンセンサスに基づく決定が求められる.表1にも記載されているように,この診断基準は薬物療法の診断基準ではなく,動脈硬化性疾患の危険群としてのスクリーニング基準であることを十分認識する必要があろう.治療については,他の危険因子を考慮に入れて行うのであり,そのための最初のステップである.Current Therapy 2012 Vol.30 No.320727