カレントテラピー 30-2 サンプル page 9/26
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概要:
ストレスと疾患ストレスと漢方治療,アティテューディナル・ヒーリング*水島広子心身一如の体系をもち,人間を統合的にとらえる漢方は,ストレス関連の諸症状に対して有用であることが知られている.また,病気では....
ストレスと疾患ストレスと漢方治療,アティテューディナル・ヒーリング*水島広子心身一如の体系をもち,人間を統合的にとらえる漢方は,ストレス関連の諸症状に対して有用であることが知られている.また,病気ではなく個人の自然治癒力に焦点を当てて治療が行われること,西洋医学的に診断がつかない患者に対しても随証治療が可能であること,加齢などの変化に逆らわずバランスを重視していくことなど,ストレス関連症状に漢方を用いることの利点は多い.一方,アティテューディナル・ヒーリング(attitudinal healing:AH)は治療ではなくピア・サポートの活動であるが,心の平和を唯一の目的とするものである.自分を苦しめる「とらえ方」を「怖れ(fear)」と総称し,それを手放すプロセスに焦点を当てる.「怖れ」はストレスをつくり出すものであり,「怖れ」の手放しはストレスからの解放にそのままつながるものである.本稿では,漢方とAHのそれぞれについてストレスに対処するうえで役立つ基本的な考え方を概説し,最後に漢方とAHの共通点を述べる.Ⅰストレスと漢方現代日本において漢方はその有効性と安全性,また日本人の統合医療志向のために再び普及の一途をたどっている.現在,約150の漢方方剤が保険適用となっており,医師の7割以上が漢方を処方している.がん,婦人科疾患,アレルギー疾患,各種疼痛など幅広い領域に漢方が使用されており,学会の治療ガイドラインに含まれているものもある.最近のインフルエンザ流行においては,急性疾患に対する漢方の効果が注目された.全国の医学部・医科大学でも漢方教育が取り入れられており,日本東洋医学会の専門医教育も行われている.ストレス関連の治療において,漢方がもつ可能性は大きい.第一に,漢方は人間を統合的にとらえ,心身一如の体系をもっている.心身二元論をとる西洋医学では,1936年にSelyeがストレス学説を発表するまで,ストレスと身体的反応の関連は明確に位置づけられてこなかったが,その後,精神神経免疫内分泌学の発展により,心身一如も西洋医学的に解明の途上にある.ストレス関連の症状を有する患者は現代日本において多数存在するが,漢方は,情動反応と身体反応を区別しないため,両者の複雑なかかわりを統合的に扱うことができる.また,生体防御反応として感情を位置づける漢方の考え方はストレス管理に大変有用である.第二に,漢方は病気ではなく患者に焦点を当てる.現代西洋医学では,症状の原因が明らかにされ,それに対して治療が行われる.一方,治療の基本が個人の自然治癒力を増すことにある漢方では,治療は患者に焦点を当てて行われる.患者の状態は体質と*水島広子こころの健康クリニック(対人関係療法専門)院長/慶應義塾大学医学部非常勤講師64Current Therapy 2012 Vol.30 No.2152