カレントテラピー 30-2 サンプル

カレントテラピー 30-2 サンプル page 19/26

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 30-2 サンプル の電子ブックに掲載されている19ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
ストレスと疾患メタボリックシンドローム:ストレスとの関連帝京大学公衆衛生大学院・医学部附属病院心療内科教授中尾睦宏メタボリックシンドロームの日本独自の診断基準は2005年に策定され,40?74歳の職域や地域住....

ストレスと疾患メタボリックシンドローム:ストレスとの関連帝京大学公衆衛生大学院・医学部附属病院心療内科教授中尾睦宏メタボリックシンドロームの日本独自の診断基準は2005年に策定され,40?74歳の職域や地域住人を対象とした特定健康診査・特定保健指導が2008年度から義務化された.健診結果から身体の状態を理解し,生活習慣との関連を認識してもらうことが健診・保健指導の目的となっている.さらにメタボリックシンドローム予防の保健指導を必要とするものに対しては,そのリスクに応じて動機づけ支援や積極的支援を実施することになっている.食生活の改善や運動で予防する意識が広がりつつあるが,ストレスが危険因子になるという視点は忘れがちであるので,メンタルヘルスケアの面からもメタボリックシンドローム対策を真剣に考える必要がある.具体的にはうつ病や不安障害とメタボリックシンドロームとの関連を示すエビデンスが蓄積されている.こうしたメンタルヘルスとメタボリックシンドロームをつなぐ生物学的メカニズムとしては,視床下部-下垂体-副腎皮質系のストレスホルモンのフィードバック機能不全,交感神経系の慢性的過活動,免疫機能の異常,血管内の炎症性変化などさまざまな原因が考えられている.健康に関連するライフスタイルとしては,不適切な食生活,運動不足,喫煙,飲酒,ストレス過剰などがメタボリックシンドロームを引き起こす要因となる.こうした要因は各々独立したものではなく,相互に密接に関連している.ストレスを自覚すると食生活が乱れ飲酒量が増える経験は,日常よく認められるところである.逆に考えれば,適切なストレスマネージメントによって生活習慣全体の変容・改善を期待することができる.ただしライフスタイルは,個人と環境が年数をかけて蓄積した結果によるものであり,その個人の内面深くまで根づいていることに留意しないといけない.生活指導に際しては,不健康なライフスタイルが明らかな場合であっても頭から注意しないようにする.なぜそのようなライフスタイルが形成されたか理解に努め,仕事や日常生活で自分や他者が困っている部分については,その問題点を共有できるように話し合う.その共有の過程のなかで,ストレスの影響を評価し,ストレスの原因そのものの軽減または受け止め方の修正をする余地がないか,本人・生活指導者双方が探ることがポイントとなる.ストレスマネージメントは交感神経系過活動の抑制といった直接的な効果だけでなく,生活習慣の変容を介しての持続的なリラクセーション環境の維持や身体的負荷の軽減,さらには治療に従うアドヒアランスの向上といった効果が期待できる.74Current Therapy 2012 Vol.30 No.2162