カレントテラピー 30-2 サンプル page 17/26
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薬物療法が選択される背景・現在中等症?重症であること・過去の抗うつ薬への良好な反応・患者の希望・睡眠,食欲の障害が重い・焦燥・維持療法が必要と予測される精神療法が選択される背景・軽症?中等症に単独で・過....
薬物療法が選択される背景・現在中等症?重症であること・過去の抗うつ薬への良好な反応・患者の希望・睡眠,食欲の障害が重い・焦燥・維持療法が必要と予測される精神療法が選択される背景・軽症?中等症に単独で・過去の心理療法への良好な反応・患者の希望・心理社会的状況・心理社会的ストレスや対人関係の問題が明らか・パーソナリティ障害の合併・妊娠・授乳中,挙児希望・遷延,重症の場合は薬物療法と併用表4米国精神医学会(APA)ガイドラインでの推奨内容〔参考文献13)より一部引用改変〕きにうつ病と診断される.さらに,重症度判定においては,診断に必要な症状項目数が5つ以上で余分がほとんどなく,職業的機能・日常の社会的活動・他者との人間関係の障害がわずかの場合に軽症と診断され,症状項目数が5つより数個余分があり,社会機能が著しく障害されている場合は重症,軽症と重症の中間は中等症と診断される.3うつ病における抗うつ薬の適応諸外国のガイドラインでは,社会的背景によって多少の差はあるものの,おおむね中等症以上では薬物療法が中心となるのに対して,軽症以下では安易に抗うつ薬を処方せず注意深く経過を追い,心理療法などの非薬物療法を優先する姿勢が求められている.しかし,認知行動療法などの本格的な心理療法が手軽に行える環境にない本邦の現状においては,抗うつ薬が中心となるため,慎重な使用が求められる12).患者背景や症状により,抗うつ薬を使うべきときにはしっかりと使い,そうでないときにはできる範囲の心理療法や生活指導を行うことになるが,その判断材料としてAPAによる最新のうつ病治療ガイドライン(2010)が参考になる13).このガイドラインでは,軽症うつ病に対する抗うつ薬の使用を否定せず,患者背景によって心理療法と使い分けることを勧めている.どのような場合にそれぞれの治療法が勧められるかを表4に示す.4抗うつ薬の選び方抗うつ薬を選ぶ際は副作用が少ない点から,SSRI,SNRI,NaSSAが第一選択となることが多い.このなかで,患者の症状と,抗うつ薬の効果・副作用の組み合わせから,各患者に対して最適と思われる抗うつ薬を選ぶこととなる.例えば意欲低下が強い患者には,意欲向上に関与表5適正使用のポイント1)単剤にて治療を行う2)最小治療用量から開始する3)寛解を目標にする4)寛解に至るまで副作用に考慮しながら最大量まで増加5)効果判定には6?8週間かける6)寛解後には同用量を最低6カ月,継続投与する〔参考文献14)より一部引用改変〕するノルアドレナリンの再取り込みを阻害するSNRIの効果が期待できる.また食欲不振が強い患者には,消化器症状を副作用として起こしやすいSSRIやSNRIよりも,NaSSAを選ぶことにより副作用とされる食欲増進が,逆に治療的効果をもつようになる.さらに鎮静作用の強弱で抗うつ薬を分けると,NaSSAは眠気が強く鎮静系として,SSRIやSNRIでは不安・焦燥が強まることがあり非鎮静系と分類することができる.そのため,NaSSAは不眠を訴える例や,休養・入院加療が必要な場合,さらに不安,焦燥が強い若年層でよい適応となる.また,仕事などで眠気が支障となる例ではSSRIやSNRIがよい適応となる.5抗うつ薬の適正使用抗うつ薬を選択したら,適正に使用して効果を判定しなければならない.治療の目標は,症状の改善である「反応」ではなく,ほぼ症状が消失した「寛解」である.「寛解」を半年から1年続けると,再燃や自殺の危険性が下がる「回復」に達し,この状態が最終ゴールとなる.抗うつ薬の適正な使用法について表5に示す14).選択した抗うつ薬が有効な場合は,通常6?8週後には症状は軽減するため,この時点で十分に増量しても効果がなかった場合は,他薬への72Current Therapy 2012 Vol.30 No.2160