カレントテラピー 30-2 サンプル page 14/26
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概要:
レナリン,セロトニン,ドパミンといった神経活性の変化が気分障害を引き起こすという仮説である.セロトニン系は抑うつや不安,強迫症状など,ノルアドレナリン系は抑うつや意欲低下など,ドパミン系は食欲低下や快....
レナリン,セロトニン,ドパミンといった神経活性の変化が気分障害を引き起こすという仮説である.セロトニン系は抑うつや不安,強迫症状など,ノルアドレナリン系は抑うつや意欲低下など,ドパミン系は食欲低下や快楽消失など,それぞれ得意な分野があるとされている.現在使われている多くの抗うつ薬はこのモノアミン仮説に基づいて説明され,抗うつ薬は中枢のモノアミンニューロンのシナプス間に働き,シナプス間隙のモノアミンの量を増やすことで,抗うつ薬の効果をもたらしていると考えられている.Ⅲ抗うつ薬の特徴と副作用1三環系抗うつ薬三環系抗うつ薬はシナプス前膜へのセロトニン,ノルアドレナリン再取り込み阻害が主な作用機序である.強力な抗うつ効果があり,長年の臨床成績によってもその有用性は確立されている.しかし,シナプス後膜のヒスタミンH1受容体,アセチルコリンのムスカリン受容体,アドレナリンα1受容体を遮断するため,抗ヒスタミン作用としての眠気,抗コリン作用としての便秘・口渇・尿閉,α1受容体遮断作用としてのめまい・立ちくらみ・過鎮静が生じる.また心臓のイオンチャネルにも作用するため,用量依存性に心電図上のQT間隔の延長を起こすので,特に過量服薬時などに致死的となり得るため,問題となる.2四環系抗うつ薬四環系抗うつ薬は,初期の三環系抗うつ薬よりも選択的にモノアミンの再取り込みを阻害している薬剤が多い.抗うつ作用は,三環系と比べて若干弱くなるが,副作用も軽減されている.特にミアンセリンは催眠効果に優れ,不眠や時にせん妄にも用いられる2).3選択的セロトニン再取り込み阻害薬そのメカニズムから,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)とよばれ,選択的にセロトニンに働き,抗うつ効果を発揮する.抗うつ効果は三環系抗うつ薬よりマイルドだが3),忍容性においては他の三環系薬より優れている4).意欲にはあまり効果がなく,肝臓の酵素であるチトクロームP450を阻害するため相互作用に注意が必要である.本邦では,フルボキサミン,パロキセチン,セルトラリンに,2011年に上市されたエスシタロプラムを加えた4剤のSSRIが販売されている.SSRIは抗コリン,抗α1作用が弱いので副作用は三環系に比べて少ないが,内服開始時の消化器症状(悪心,嘔吐,下痢),性機能障害,セロトニン症候群,中断症候群などがみられる.内服開始時の消化器症状に対しては,事前に説明することで患者が驚かないようにして,投与初期に頓服でモサプリドなどの胃腸機能改善薬を処方することが有効である.性機能障害としては,男性では勃起障害や射精障害,男女ともでは性欲やオルガズムの低下が現れる.患者が訴えにくい副作用のため,医師の側からタイミングをみて尋ねるなどの配慮が求められる5).重篤な副作用として,頻度は少ないがセロトニン症候群にも注意が必要である.セロトニン症候群は薬剤開始または増量後すぐに,錯乱,軽躁状態,興奮,ミオクローヌス,反射亢進,発汗,悪寒,振戦,下痢,協調運動障害,発熱などを認める症候群である.その際は原因薬剤を中止し,補液などの全身管理を行えば数日で回復するとされている.薬剤の減量および中止時には中断症候群に注意が必要である.中断症候群は,1カ月以上SSRIを使用後,急激な中断もしくは減量の1?7日後に生じる.症状としてはめまい,頭痛,不安感などがある.セロトニン剤再取り込み阻害が強く,半減期の短い薬剤で起こりやすいため注意が必要だが,徐々に内服量を減量すれば避けることができる6).4セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬そのメカニズムから,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin noradorenalinreuptake inhibitor:SNRI)とよばれ,シナプス間隙のセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで抗うつ効果を発揮する.SSRIと比Current Therapy 2012 Vol.30 No.215769