カレントテラピー 30-2 サンプル

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ストレスと疾患抗うつ薬の特徴と使い方a b s t r a c t*1*2新福正機・渡邊衡一郎抗うつ薬の選択には,画一的な方法はなく,患者の症状と抗うつ薬の効果・副作用の組み合わせから,各患者に対して最適と思われる抗....

ストレスと疾患抗うつ薬の特徴と使い方a b s t r a c t*1*2新福正機・渡邊衡一郎抗うつ薬の選択には,画一的な方法はなく,患者の症状と抗うつ薬の効果・副作用の組み合わせから,各患者に対して最適と思われる抗うつ薬を選ぶこととなる.そのため各薬剤のプロフィールに精通する必要がある.また,うつ状態を呈するすべての疾患に対して抗うつ薬は有効ではなく,疾患によっては有害となることもあるので,抗うつ薬の適応となる疾患を理解することが必要となる.選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin noradorenalin reuptake inhibitor:SNRI),ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenergic andspecific serotonergic antidepressant:NaSSA)などが副作用の少ない点から,第一選択となることが多い.抗うつ薬の選択後は,適正に使用して効果を判定しなければならない.治療の目標は,ほぼ症状が消失した「寛解」である.「寛解」を半年から1年続けると,再燃や自殺の危険性が下がる「回復」に達し,この状態が最終ゴールとなる.精神科の治療において薬物療法以外に,精神療法や環境調整なども重要であり,それらのバランスの取れた治療が求められる.Ⅰはじめにストレスに伴う疾患への治療薬には,抗うつ薬,抗不安薬,睡眠薬などがある.本稿ではそのなかで,抗うつ薬の一般的な特徴と使い方について説明する.Ⅱ抗うつ薬の作用機序うつ病の病態生理はいまだ解明されておらず,いくつかの仮説がある.ストレスとうつ病の関係については,ストレス性の刺激に対して視床下部-下垂体-副腎皮質系(hypothalamo -pituitary -adrenalaxis:HPA系)が関与しており,このHPA系の異常がうつ病の病態と考えるHPA仮説がある.HPA系はグルココルチコイド受容体を介したフィードバック機能で調節されており,ストレスに対してHPA系の反応が過剰にならないように調整されている.しかし,このフィードバック機能の低下という脆弱性をもった個体がストレスにさらされると,HPA系の機能亢進が持続し,摂食行動の抑制,意欲的行動の抑制,悲哀感の増加を引き起こすとともに,嫌悪体験の記憶の促進,嫌悪刺激に対する過剰反応を引き起こし,うつ病になると考えられている1).うつ病の病態生理のもう一つの理解として,モノアミン仮説がある.これは,脳内におけるノルアド*1慶應義塾大学医学部精神神経科学教室/あさかホスピタル総合診療科*2慶應義塾大学医学部精神神経科学教室専任講師68Current Therapy 2012 Vol.30 No.2156