カレントテラピー 30-2 サンプル page 12/26
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代替療法体性の認識,現在への集中,つながり,自分に対して正直,選択)か,その反対か」という選択は,常に自分の意思で行えるものであり,いつでも選び直せるものである,という理解が重要である.そして,心の姿....
代替療法体性の認識,現在への集中,つながり,自分に対して正直,選択)か,その反対か」という選択は,常に自分の意思で行えるものであり,いつでも選び直せるものである,という理解が重要である.そして,心の姿勢の選択は自分の意思でできるものなので,その選択には自分が責任を負っている,という自覚を促していく.なお,AHでは心の姿勢と行動を区別して考えることで,怖れを手放しやすくなる.例えば職場で部下のミスを注意するときに,心の姿勢としての「怖れ」(また同じミスをおかしたダメな人間だという評価や,注意したら嫌われるのではないかという不安など)を乗せるのか,単に注意をするのか,という選択がそこにある.心の姿勢と行動との区別は,多くのストレスから解放されるヒントになるといえる.Ⅴおわりに漢方とAHという,異なるバックグラウンドをもつものについて述べてきたが,この2つには共通する要素も見いだすことができる.まず,両者とも,自分のなかに本来備わっている力とのつながりを見いだす,という基本姿勢をもつ.また,人間として自然に起こるもの(感情や加齢など)を否定せず,かつそれにとらわれずにバランスをとっていくという姿勢も共通している.原因を究明したり分析したりすることよりも,身体や心の声を聞きながら現在の心地よさを選んでいくところも同様である.なお,AHは現実的に用いても有用であるが,同時にスピリチュアルなアプローチとしても知られている.世界保健機関(WHO)は,健康の定義として,従来の「身体的(physical)」「精神的(mental)」「社会的(social)」の3つに加えて,「スピリチュアル(spiritual)」という要素を含めることを提案した.宗教ではない「スピリチュアル」という概念は現代日本人の多くにとってまだまだ理解しがたいものかもしれないし,学術的な場ではいまだにスピリチュアリティについて語りにくい雰囲気があるが,例えば精神医学の領域でも,Cloningerが提案しているパーソナリティ7因子モデル4)の「自己超越(self -transcendence)」は明らかにスピリチュアルな概念である.有効な精神療法の過程ではスピリチュアルな変容も観察されることが少なくなく,それは今まで「エンパワーメント」という言葉が示そうとしてきた概念に近いものではないかと思っている.外部の条件によって自動操縦されるのでもなく,また,小手先のスキルを云々するのでもなく,自分のなかに本来備わっている力とのつながりを見いだすこと,といってよいのではないかと思うが,それこそが漢方とAHに共通する姿勢であり,今後のストレスマネジメントのひとつの方向性となるものだと考えられる.参考文献1)水島広子,大野裕,神庭重信ほか:漢方外来受診患者における身体表現性障害の検討.日東洋医誌48:23 -29, 19972)Levy BR, Slade MD, Kunkel SR, et al:Longevity increasedby positive self -perceptions of aging. J Pers Soc Psychol83:261-270, 20023)水島広子:怖れを手放すアティテューディナル・ヒーリング入門ワークショップ.星和書店,東京,20084)Cloninger CR, Svrakic DM, Przybeck TR:A psychobiologicalmodel of temperament and character. Arch Gen Psychiatry50:975-990, 1993Current Therapy 2012 Vol.30 No.215567