カレントテラピー 30-2 サンプル

カレントテラピー 30-2 サンプル page 10/26

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病気のせめぎ合いの結果と説明される.この考え方は生活習慣病やストレス関連の領域において有用である.第三に,漢方では,診断(証)がそのまま治療法の選択につながるという点も大きな特徴である.つまり,診断が....

病気のせめぎ合いの結果と説明される.この考え方は生活習慣病やストレス関連の領域において有用である.第三に,漢方では,診断(証)がそのまま治療法の選択につながるという点も大きな特徴である.つまり,診断がつかないため治療ができないという状況も,診断はついたが治療法がないという状況も起こり得ない.これは,西洋医学的に説明不能な身体症状を有する患者たちに特に有効である.西洋医学的に説明不能な身体症状を有する患者は相当数存在し,国際的にも大きな焦点となっている.異常がないという説明に納得せず,繰り返し医学的検索を求めて受診行動を繰り返すため,医療費への負担にもなっている.私たちの研究では,漢方外来受診患者の65%が西洋医学的に説明不能な身体症状を有しており,一般のプライマリ・ケアにおける17.9%よりもはるかに多かった1).これは,漢方がそのような症状に有効だと認識されていることを示唆する.西洋医学的に説明不能な身体症状を有する患者に対して漢方治療を行う利点として,経済的な問題のほか,診断の正確さという観点もある.身体表現性障害と診断された患者の2年間のフォローアップ研究では,その後,器質的な障害があると診断された患者も存在したことが示されている.漢方であれば,西洋医学的な根拠の有無にかかわらず同様の治療が行われるため,患者にとってのデメリットを減じるといえる.漢方は身体的な変化に伴うストレスに対しても独特の立場をとる.更年期障害への適用にみられるように,加齢を自然なこととしてとらえ,否認することなく,それぞれの時期に適切なバランスを整えていく.加齢をポジティブにとらえる人のほうが「喪失」ととらえる人よりも長寿であるということが示されている2)が,加齢を受け入れつつ心身のバランスをとり健康を感じられるようにしていくという漢方のアプローチは,抗加齢効果も高い可能性があり,今後の発展が期待される.Ⅱアティテューディナル・ヒーリングとはアティテューディナル・ヒーリング(attitudinalhealing:AH)3)とは,心の平和を唯一の目的とし,自分の責任で心の姿勢(attitude)を選び取っていくというプロセスである.1975年に,精神科医であるGerald G Jampolsky博士と4名のボランティアによって,その活動がスタートした.致死的な病をもつ子どもたちのサポートグループが,その始まりであり,その後,そういった子どもたちの親やきょうだい,教育現場,刑務所など,さまざまな領域へと活動が広がってきた.米国外にも約30カ国に拠点をもち,サポートグループが展開されているほか,米国オクラホマシティの連邦政府ビル爆破事件,クロアチアなど,各地の危機においても派遣されたチームが活躍してきた.サービスは原則として無償でボランティアによって提供されている.これらの活動が評価されて,創始者のJampolskyに対しては,2005年の米国医師会の栄誉賞をはじめとする数多くの賞が贈られている.ⅢストレスとAHAHでは,私たちの気分を悪くするのは他人や出来事ではなく,それらに対する自分自身のとらえ方であると考える.認知に注目するという点では認知療法にも近いが,AHは,自分を苦しめる「とらえ方」を「怖れ(fear)」と総称し,それを手放すプロセスに焦点を当てるというところが特徴である.「怖れ」というのは,自分の心のあり方は環境に依存しているという信念体系のことともいえ,結果としてもたらされる気持ちには,怒り,罪悪感,不安,自己正当化,「被害者意識」などがある.いずれもストレス時にみられる感じ方である.自分の心のあり方は環境に依存しているという信念体系を,AHでは「自動操縦」に例える.「怒り」というボタンを押されると,ただ怒り続けるというのは自動操縦の飛行機と同じであり,人間の特異性として,Current Therapy 2012 Vol.30 No.215365