カレントテラピー 30-12 サンプル

カレントテラピー 30-12 サンプル page 9/30

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配合剤の現状と展望降圧薬*1*2大蔵隆文・檜垣實男高血圧治療の最大の目的は,高血圧臓器障害の進展を予防し,心血管病の発症を抑制することである.この目的のために最も重要なことは厳格な降圧療法である.この厳....

配合剤の現状と展望降圧薬*1*2大蔵隆文・檜垣實男高血圧治療の最大の目的は,高血圧臓器障害の進展を予防し,心血管病の発症を抑制することである.この目的のために最も重要なことは厳格な降圧療法である.この厳格な降圧を実践するためには,併用療法が必要である.現在,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)や,Ca拮抗薬を第一選択薬として使用することが多い.したがって降圧不十分な場合,この2剤の併用がわが国では最も多く行われている.これに加えてARBと利尿薬の併用は,降圧効果,副作用の軽減に対して理想的な組み合わせであり,大規模臨床試験でもこれらの併用の有用性が証明されている.この数年,ARB+利尿薬およびARB+Ca拮抗薬の配合剤が多数発売された.降圧薬は,長年にわたって内服を続けなければならないため,いかにアドヒアランスを改善するかも重要な課題である.配合剤の使用によって投薬数を減らすことは,アドヒアランスを改善し,安定した降圧効果が得られる可能性が高くなる.近い将来,ARB+Ca拮抗薬+利尿薬の3剤合剤の発売も近いものと思われる.Ⅰ血圧上昇のメカニズム高血圧は複数の遺伝子多型の重積によって決められる高血圧感受性体質に,過剰な食塩摂取,肥満,ストレスなどの環境因子が付加されて発症する多因子疾患(multifactorial disease)である.米国クリーブランドクリニックのPage博士は,高血圧のモザイク説を唱え,高血圧は複雑系であることを示した(complex system)(図1)1).このPage博士のモザイク説に最も適した降圧療法を考えるならば,多因子に対応する複数の降圧薬の併用療法になる.しかし,複雑なシステムにおいては各構成因子間の相互作用が強ければ,ひとつの因子を調整するだけで,全システムの調整がある程度可能になる.このシステム1遺伝12心臓性2血管平滑筋11血液量3腎性10神経性血圧4内分泌性9心理・社会性5体液性8肥満6ナトリウム7環境性図1高血圧発症のモザイク説〔参考文献1)より引用改変〕を蜘蛛の巣のネットのように例えれば,強力な糸(相互作用)で編まれたネットは一部を引っ張れば全体が付いてくる.これが単剤でも血圧を下げることが*1愛媛大学大学院病態情報内科学准教授*2愛媛大学大学院病態情報内科学教授26Current Therapy 2012 Vol.30 No.121242