カレントテラピー 30-12 サンプル page 4/30
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配合剤の現状と展望企画琉球大学大学院医学研究科臨床薬理学分野教授植田真一郎エディトリアル降圧薬にはもともと合剤が存在したが,読者で使用した経験を持つ方は少ないであろう.最近の利尿薬とアンジオテンシン受....
配合剤の現状と展望企画琉球大学大学院医学研究科臨床薬理学分野教授植田真一郎エディトリアル降圧薬にはもともと合剤が存在したが,読者で使用した経験を持つ方は少ないであろう.最近の利尿薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の合剤を皮切りに多くの降圧薬,降圧薬と高脂血症薬,糖尿病薬,呼吸器病薬の合剤が承認され,使用できるようになった.本来薬物治療は「さじ加減」といわれるように一人ひとりの患者に合った薬剤の選択と用量の調節が必要とされる.いささか我田引水ながら私が研修医のときに臨床薬理学を勉強するきっかけになったのも「個々の患者における治療の至適化」を科学的に行う,という臨床薬理学の理念である.合剤はそのあたりを半ば放棄しているようにもみえるが,そもそも降圧薬では多くの患者にとって細かな調節よりも服用の継続,併用による降圧そのものが問われるのであるとすれば,理に適っているのかもしれない.もちろん併用による相乗効果という薬理学的な正当性,アウトカム改善における相乗あるいは相加効果の裏づけがあれば,「『エビデンス』をまるごと服用!」なんていうちょっと怪しいコピーをつけられそうであるが,実は併用に関してはまだまだどの領域でも基礎的な薬理学研究や,臨床薬理試験,アウトカムを評価できる臨床研究を行うべき課題が多い.合剤の出現は薬剤そのものの効能や副作用,新薬の出現のよる長期のアウトカムの改善への期待,という従来の議論に加え,足し算のEBMの妥当性や医療経済の問題,薬剤の承認における真のアウトカムの評価,合剤使用下(併用療法下)での個別化・至適化,製造販売後の有効性・安全性の評価における方法論,アドヒアランスとアウトカムなどいくつかの問題を私たちに投げかけるが,それは現代の,特に慢性疾患における薬物治療の問題そのものでもある.今回の特集にあたり,合剤の歴史をひもとき,上述したさまざまな問題について専門家に解説をお願いした.合剤の専門家というものは存在しない(私ももちろんそんなことはいえない)が,個々の専門とする領域から,合剤という切り口で対象とした疾患の薬物治療を再考するきっかけになれば幸いである.Current Therapy 2012 Vol.30 No.1212237