カレントテラピー 30-12 サンプル

カレントテラピー 30-12 サンプル page 26/30

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Key words積極的降圧,脂質低下,血糖管理横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学助教押川仁『高血圧治療ガイドライン2009』(JSH2009)において,糖尿病や慢性腎臓病(chronickidney disease:CKD),心筋梗塞後など....

Key words積極的降圧,脂質低下,血糖管理横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学助教押川仁『高血圧治療ガイドライン2009』(JSH2009)において,糖尿病や慢性腎臓病(chronickidney disease:CKD),心筋梗塞後などのハイリスク症例では心血管疾患抑制と腎保護の観点から,130/80mmHg未満という厳しい降圧目標が設定されている.しかしながら,その降圧目標の妥当性に議論の余地があるとともに,さらなる降圧を目指した積極的降圧療法の有益性は明らかではない.CKDでは,メタ解析において130/80mmHg程度までは到達した血圧値が低いほど,推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)の低下速度が遅くなることが示されている.MRFITやUKPDS研究ではそれよりもさらに血圧を低下させても,腎イベント発症が抑制されることを示している.ところが,ONTARGETのサブ解析では,心血管疾患ハイリスク症例において,心血管疾患発症を抑制するのは140/90mmHg程度を目標とした場合であり,130/80mmHg程度まで血圧を低下させると心血管疾患発症の抑制がみられなくなると報告している.またINVESTにおいては,糖尿病と冠動脈疾患をもつ患者で,SBP<130mmHgの厳格降圧は130~140mmHgの通常降圧治療と比べて心血管イベントを抑制できず,全死亡率はむしろ増加したと報告している.さらに,ACCORDにおいてもSBP 120mmHg未満の厳格降圧治療は非致死性脳卒中のみ抑制したが,それ以外の心血管イベントは抑制されなかったと報告している.血糖については,ACCORD,ADVANCE両試験において,厳格な血糖コントロールの効果が検討された.結果はどちらの試験においても厳格な血糖コントロールは心血管イベントを抑制できず,ACCORDではむしろ低血糖によると思われる総死亡が増加していた.一方,UKPDSでは,10年のフォローアップ研究において,厳格な血糖コントロールが細小血管障害および心血管イベントを抑制し,特に糖尿病発症早期からの長期にわたる血糖コントロールの重要性を示した.脂質については冠動脈疾患を有する高リスクの患者において,LDL - Cの管理目標が100mg/dLとされているが,大規模臨床試験からは二次予防においてLDL - Cの目標を70mg/dLとすることにより心血管イベントを抑制できると示されており,積極的脂質低下治療が標準化してきている.以上のように,血圧,血糖については積極的治療の効果への疑問とともに,弊害も危惧されていることから,今後の研究結果を基にガイドラインが改訂される可能性がある.Current Therapy 2012 Vol.30 No.12131195