カレントテラピー 30-12 サンプル

カレントテラピー 30-12 サンプル page 25/30

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配合剤の現状と展望相乗的薬理作用大阪市立大学大学院医学研究科分子病態薬理学准教授泉康雄1はじめに薬剤の相乗作用は,2種類以上の薬剤を併用した際,その効果が代数和以上になって現れる場合をいう.一般的には二....

配合剤の現状と展望相乗的薬理作用大阪市立大学大学院医学研究科分子病態薬理学准教授泉康雄1はじめに薬剤の相乗作用は,2種類以上の薬剤を併用した際,その効果が代数和以上になって現れる場合をいう.一般的には二つの薬剤の作用方向が同じで,作用点が異なる薬剤間でみられることが多い.相乗作用は薬力学的なレベルだけで発現するのではなく,薬物の吸収促進,代謝・分解阻止,排泄抑制,血漿アルブミンとの結合解離などの例も考えられる.本稿では,相乗的効果が得られている代表的な配合剤の薬理作用について述べる.2吸入ステロイド薬と長時間作用性吸入β2刺激薬との配合剤喘息治療のガイドラインでは,低用量吸入ステロイド薬だけでは十分に喘息をコントロールできない場合の第一選択薬として,吸入ステロイド薬と長時間作用性吸入β2刺激薬の併用が推奨されている.吸入ステロイド薬は,喘息において気道炎症に対する抑制作用をもち,吸入β2刺激薬は,気管支拡張作用により気道狭窄に対する改善作用を有している.これらの合剤(吸入薬)はそれぞれの薬剤の作用を併せもつが,ステロイドがβ2受容体数を増加させて吸入β2刺激薬の効果を高めるとともに,吸入β2刺激薬がステロイド薬と結合したステロイド受容体の核内移行を促進させてステロイドの作用を増強する,という「相乗効果」が確認されている.また配合剤の併用により,吸入ステロイド薬の減量や,喘息発作の減少も確認されている.3アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とサイアザイド系利尿薬との配合剤食塩摂取制限が血圧を低下させることは知られている.一方で,ナトリウム喪失が継続すると,生命を維持するために生体はレニン分泌を亢進し,レニン・アンジオテンシン系(RAS)を活性化させ,ナトリウム喪失を抑制する.このように,ナトリウムとRASは天秤の両側の重りのような関係がある.利尿薬によって引き起こされるRASの活性化をアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が抑制することにより,それぞれの作用を超えた「相乗効果」が発揮できる.また,この配合剤は利尿薬の低カリウム血症,ARBの高カリウム血症という副作用を打ち消し合うため,より有用である.4おわりに相乗効果を発揮できる配合剤は今後も増えていくと考えられる.しかし,以前はお互いの作用を打ち消し合って効果が全くなくなった配合剤も存在した.本来,「相乗的な薬理作用」を明確にしたうえで配合剤を開発すべきであるが,現時点では明確な承認基準はない.それゆえ,臨床で用いる際には,起こり得るあらゆる可能性に対する想像力を働かせる必要がある.94Current Therapy 2012 Vol.30 No.121310