カレントテラピー 30-12 サンプル page 17/30
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配合剤の用量臨床薬理学的考察Proportion With CV Event302520151050100%(n=670)90%(n=254)75%(n=60)Self-reported Medication Adherence50%(n=23)図3内服アドヒアランスと心血管イベント発症率〔参....
配合剤の用量臨床薬理学的考察Proportion With CV Event302520151050100%(n=670)90%(n=254)75%(n=60)Self-reported Medication Adherence50%(n=23)図3内服アドヒアランスと心血管イベント発症率〔参考文献8)より引用改変〕Ⅲアドヒアランスと心血管疾患ARBとチアジド系降圧利尿薬の併用の有用性が明らかとなり,1995年,米国で最初にARB/HCTZが製造承認されたのは,ロサルタン・HCTZ配合剤で,日本での製造承認は2006年である.2剤併用から配合剤への移行により,内服アドヒアランスが向上し,その結果,心血管イベントが抑制されることが期待されている.多くの大規模臨床試験の結果に基づき日本高血圧学会から降圧目標値が提示されているが,本邦の降圧治療に関する調査報告によると,降圧目標達成率は3,435例中32.9%であった6).脳血管疾患患者の2/3,虚血性心疾患患者の半数は血圧コントロールの不良が原因と報告されており7),高血圧症患者の降圧目標達成は,公衆衛生および医療経済上の重要課題である.降圧目標達成のため,多くの患者に2種以上の降圧薬が投与されているが,内服薬数の増加が内服アドヒアランスを低下させ治療効果に影響を与えることが指摘されている.安定狭心症患者1,015名を対象に,内服アドヒアランスと心血管イベント発症(心筋梗塞,脳卒中,冠動脈疾患死)を検討した前向きコホート研究(追跡期間3.9年)では,内服遵守率75%以下のノンアドヒアランス群と遵守率90%以上のアドヒアランス群の心血管イベント発症率はそれぞれ22.9%と13.8%(p=0.03)で,心血管イベントリスク因子で補正したノンアドヒアランスによる心血管イベント発症ハザード比は2.3倍(95%CI 1.3~4.3,p=0.006)であり,予想されたことではあるが,アドヒアランスの重要性が再認識された(図3)8).また,内服数の減少がアドヒアランスに与える影響を検討した研究報告によると,ACE阻害薬(リシノプリル)およびHCTZをそれぞれ単剤処方した場合と,配合剤として処方した場合との12カ月時点での内服遵守率はそれぞれ57.8%と68.7%で,配合剤により内服遵守率が1.18倍増加(p<0.05)していた9).以上の結果は,これまで数多くのエビデンスを発信してきたARBとチアジド系降圧利尿薬の2剤を配合剤として1剤にすることで,チアジド系降圧利尿薬の普及率とアドヒアランスの向上によって心血管イベントのさらなる抑制が期待されることを示唆している.ⅣARBとHCTZとの薬物動態学的相互作用炭素同位体14CでラベルしたHCTZ 5mg経口投与の薬物動態学的検討では,投与量の57.5~82.7%が尿中に,11.4~24.5%が便中に排泄されたが,胆汁中には排泄されなかった.また,尿中に排泄された94.9~97.2%は未変化体であった.つまり,HCTZは肝臓での代謝をほとんど受けず,消化管から吸収された大部分が未変化体のまま尿中に排泄される10).他方,ARBの主要代謝部位は肝臓であり,現在配合剤で用いられているARBとHCTZとの薬物動態学的相互作用はなく,配合による双方の血中濃度への影響はみられない.Current Therapy 2012 Vol.30 No.12126953