カレントテラピー 30-11 サンプル

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万人あたりのアルテプラーゼ使用症例数は,1年目12.8例,2年目19.6例,3年目25.2例,4年目30.0例と着実に増加した.4年間の累積使用症例数は22,491例にのぼる.しかし,65歳以上の人口10万人当たり年間50例以上の治....

万人あたりのアルテプラーゼ使用症例数は,1年目12.8例,2年目19.6例,3年目25.2例,4年目30.0例と着実に増加した.4年間の累積使用症例数は22,491例にのぼる.しかし,65歳以上の人口10万人当たり年間50例以上の治療が行われた二次医療圏が全体の7.5%認められる一方で,年間1例も本療法が実施されていない二次医療圏が20~30%に達し,この地域格差をいかに解消していくかが今後の大きな課題である9).Ⅳ今後の展望1タイム・ウィンドウの延長rt -PA静注療法の適応症例を増やす最も有効な手段は,治療可能時間(タイム・ウィンドウ)の延長であろう.過去に実施されたアルテプラーゼ静注療法に関する6つの臨床試験をまとめたところ,4.5時間までの有効性が示唆され,2008年にはEuropeanCooperative Acute Stroke Study 3(ECASS 3)10)で,3~4.5時間の有効性が証明された.Third International Stroke Trial(IST -3)11)は,発症6時間以内で,治療効果が期待できるものの現行の適応基準を満たさない患者(80歳以上の高齢者など)3,035例が対象とされた.その結果,7日以内での安全性はアルテプラーゼ群が劣るものの,6カ月後には死亡率の差はなくなり,転帰良好者は有意に増えるという成績であった.またIST -3を加えた12統合解析)の結果では,6時間以内のアルテプラーゼ投与群は,偽薬群に比べて3カ月後の自立患者の割合が有意に多かった(46.3%vs 42.1%).日本では,2009年に厚生労働省からの意見公募に対して日本脳卒中学会からアルテプラーゼ静注療法のタイム・ウィンドウ延長(4.5時間まで)の意見が提出され,審議を重ねた結果,2012年8月31日に承認された.承認にあたって,日本脳卒中学会は「発症3時間超4.5時間以内の虚血性脳血管障害患者に対するrt -PA(アルテプラーゼ)静注療法の適正な施行に関する緊急声明」を発表し,新たな時間枠に則った診療指針を国内に周知させた.併せて現在「rt -PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針」の改訂作業を進めている.2 MRIによる症例選択発症からの時間の枠にとらわれず,症例ごとの画像所見に基づいて治療適応を決定することも検討されている.症例選択にはMRIを用い,虚血性ペナンブラを灌流画像(MR perfusion)と拡散強調画像(diffusion weighted imaging:DWI)のミスマッチ領域,不可逆的組織傷害による出血リスクの高い虚血中心部をDWI病巣の大きさで推定する.症例に応じたタイム・ウィンドウの延長(最長9時間)を達成すべく,Extending the Time for Thrombolysisin Emergency Neurological Deficits(EXTEND)(豪州,アジア),ECASS 4(欧州)が実施されている.これらの試験は起床時発症脳梗塞(wake upstroke)も対象としており,新たな概念に基づく血栓溶解療法の適応拡大,すなわちtissue based strategyの確立に寄与すると期待されている.3超音波併用療法閉塞血管の再開通率を向上させる手段として超音波併用血栓溶解法がある.診断用経頭蓋ドプラを用いたCombined Lysis of Thrombus in Brain IschemiaUsing Transcranial Ultrasound and Systemict-PA(CLOTBUST)13)や,経頭蓋カラードプラを用14いた検討)がすでに報告され,いずれもアルテプラーゼ静注療法単独に比し早期再開通率が高く,3カ月後の神経学的改善も良いという結果であった.また,超音波造影剤として普及しているマイクロバブルを併用すると,さらに血栓溶解率が向上する15).ただし,超音波の条件設定には注意が必要である.周波数が低いほど血栓溶解力は高まるが,同時に頭蓋内出血の危険性も増す.周波数300kHzを用いたTranscranial low-frequency Ultrasound-Mediatedthrombolysis in Brain Ischemia(TRUMBI)試16験)は,頭蓋内出血の増加のために中止となった.このような欠点を解決する目的で,新たな超音波血栓溶解専用装置(TCT -LoFUT,診断用と治療用の2つの超音波発生装置を積層)が日本で開発(スーパー特区)17)され,臨床応用の準備が進んでいる.10Current Therapy 2012 Vol.30 No.111110