カレントテラピー 30-11 サンプル

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脳卒中―変貌する治療・予防戦略―企画埼玉医科大学国際医療センター神経内科教授棚橋紀夫エディトリアル脳卒中の治療・予防戦略はまさに変貌を遂げつつある.脳梗塞急性期の血栓溶解療法については,発症3時間以内....

脳卒中―変貌する治療・予防戦略―企画埼玉医科大学国際医療センター神経内科教授棚橋紀夫エディトリアル脳卒中の治療・予防戦略はまさに変貌を遂げつつある.脳梗塞急性期の血栓溶解療法については,発症3時間以内の症例に対する組織プラスミノゲン活性化因子(tissue -plasminogenactivator:t -PA)静注療法が本邦においてすでに数年以上の使用経験が積み重ねられている.そして,time windowが欧米と同様に発症後4.5時間まで延長された.rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針も改訂予定であり注目すべき課題である.t -PA静注療法の問題点として明らかになったのは,内頸動脈閉塞や中大脳動脈起始部閉塞,脳底動脈閉塞などの主幹動脈閉塞例に対する治療効果の低さである.現在,t -PA静注療法後に血管内治療を追加することの有用性が論じられている.一方,血栓回収装置(Merci R,Penumbra Rなど)が次々と開発され,これらの治療成績も示されつつある.今後,急性期脳梗塞治療は大きく変化する可能性がある.また,脳卒中の前触れ発作としての一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)の早期診断,早期治療の重要性が認識され,脳梗塞へ移行するリスク評価としてのABCD 2スコアの意義についても議論されている.一方,脳出血(被殻出血)の外科的治療も『脳卒中治療ガイドライン2009』でその推奨度が見直されている.脳動脈瘤に対する治療もクリッピングあるいはコイリングの選択肢があり,症例に応じた治療方法の適切な選択が重要である.脳卒中の予防に関しては,非心原性脳梗塞に対する抗血小板薬の使い分け,および併用についての議論がなされている.本邦ではアスピリン,クロピドグレル,シロスタゾールが使用可能である.非弁膜症性心房細動患者の脳塞栓予防に関しては,新規経口抗凝固薬(ダビガトラン,リバーロキサバン,apixabanなど)が開発され,ワルファリンとの使い分けが注目されている.また,内頸動脈高度狭窄病変に対する内膜剥離術,頸動脈ステントの選択が重要な課題である.一方,脳卒中予防のためのリスク因子管理についても多くのエビデンスがありガイドラインでも取り上げられている.さらに,治療研究の最前線としての脳梗塞に対する再生医療,脳保護療法も注目すべき課題である.また,脳卒中患者への漢方治療,未破裂脳動脈瘤への対応についても執筆していただいた.これらの課題につき,opinion leaderの先生方にお忙しいなかご執筆いただいたことに謝意を表したい.脳卒中の診療に携わる先生方にとって,臨床にすぐに役立つ有益な情報となることを期待している.Current Therapy 2012 Vol.30 No.1111077