カレントテラピー 30-11 サンプル page 27/36
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概要:
治療薬解説に注意が必要である.また,ワルファリンと比較して薬価が高い.抗凝固作用の急性是正方法が確立していないことも問題点として挙げられる.新規経口抗凝固薬の投与にあたっては,適正使用方法を順守しない....
治療薬解説に注意が必要である.また,ワルファリンと比較して薬価が高い.抗凝固作用の急性是正方法が確立していないことも問題点として挙げられる.新規経口抗凝固薬の投与にあたっては,適正使用方法を順守しないと大出血を起こし得る.大出血のリスクとして,高齢,低体重,腎機能障害,抗血小板薬の併用が明らかにされている.抗凝固療法中は,十分な血圧管理が重要である.Ⅳ特殊な状況への対応1発作性心房細動への対応発作性心房細動における塞栓症発症率は持続性心房細動と差がない.したがって,発作性心房細動でも持続性心房細動と同様の方法で抗血栓療法を考慮する.2抜歯,手術,生検時の対応ワルファリンによる抗血栓療法は,抜歯時や消化管生検時にも継続可能である.ダビガトランやリバーロキサバンに関する明確な指針はないが,原則として継続で行うべきであろう.出血が懸念される場合は,ピークをずらす工夫も可能である.手術や侵襲的手技を実施する患者では,ダビガトランは半減期が短い(12~14時間)ことを考慮して24時間前までに投与を中止する.完全な止血能を要するような大手術を実施する場合や,出血の危険性が高い患者を対象とする場合には,手術直前2日間以上の投与中止を考慮し,従来の抗凝固療法と同様にヘパリンによる代替療法を考慮する.また,手術後は止血を確認した後に投与を再開する.なお,中等度の腎機能障害がある場合には,半減期が延長することから,手術前2日間以上の投与中止を考慮する.リバーロキサバン療法中に休薬が必要な場合は,24時間以上の休薬を考慮する.3出血時の対応ダビガトランやリバーロキサバンは新薬であるため,重篤な出血性合併症が発症した場合の処置とその効果に関する十分な臨床データはないが,薬剤の特徴などから対策が考慮される10).必ず行うべきことは,休薬,止血処置,適切な輸液,および頭蓋内出血時の十分な降圧である.ダビガトランは大部分が腎臓から排泄されるため,適切な輸液などで循環血液量や血圧を確保することで適切な利尿を図る.ダビガトランやリバーロキサバンには,ワルファリンにおけるビタミンKのような特異的な拮抗薬はないが,適切な輸液を行って尿量を確保すれば,ワルファリン療法中にビタミンKを静注したときと同様に,6~12時間程度で凝固能が回復することが期待される.急速に凝固能を回復したい場合は,凝固因子を補充する観点から第Ⅸ因子複合体や新鮮凍結血漿,凝固系全般を賦活化させる観点から遺伝子組み換え第Ⅶ因子製剤の投与を考慮する.内服後2時間(食事後の内服なら4時間)以内であれば,胃洗浄や活性炭の投与を行う.また,ダビガトランは透析で除去することができる.4新規経口抗凝固薬への抗血小板療法の追加抗血小板薬の併用は大出血のリスクとなることが明らかにされているため,適応の慎重な検討と,十分な血圧管理が重要である.1服薬コンプライアンスが良好であるにもかかわらず血栓・塞栓症を発症した場合,2非塞栓性脳梗塞やTIAの既往があり,抗血小板薬が必要な場合,3虚血性心疾患合併例,4ステント療法後,などの場合に考慮される.Ⅴおわりに非弁膜症性心房細動における脳梗塞予防のための抗凝固療法と,新規経口抗凝固薬の特性について概説した.新規経口抗凝固薬は従来薬であるワルファリンと比較して,多くの優れた特性を有する.その特性を最大限に発揮するためには,「禁忌の症例に投与しない」など,各薬剤の適正使用と,血圧管理や禁煙指導など普段からのリスク管理が重要である.Current Therapy 2012 Vol.30 No.11118989