カレントテラピー 30-11 サンプル page 22/36
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脳卒中―変貌する治療・予防戦略非弁膜症性心房細動患者の脳塞栓症予防,新規抗凝固薬の使い方・注意点a b s t r a c t*1*2前田亘一郎・矢坂正弘心房細動(atrial fibrillation:AF)による塞栓症を防ぐためには,....
脳卒中―変貌する治療・予防戦略非弁膜症性心房細動患者の脳塞栓症予防,新規抗凝固薬の使い方・注意点a b s t r a c t*1*2前田亘一郎・矢坂正弘心房細動(atrial fibrillation:AF)による塞栓症を防ぐためには,抗凝固療法が不可欠である.経口抗凝固薬としてはワルファリンが長年にわたってほぼ唯一の治療薬であったが,近年,新規経口抗凝固薬として抗トロンビン薬と抗Ⅹa薬が開発された.新規経口抗凝固薬はモニタリングが不要で,食事の影響を受けず,薬物の相互作用が少なく,ワルファリンと比較して脳梗塞や全身塞栓症の予防効果は同等かそれ以上,大出血発現率はワルファリンと同等かそれ以下,頭蓋内出血は大幅に減少する.新規経口抗凝固薬はこのような利点を有するが,一方で適正使用方法を遵守しないと大出血を起こし得る.大出血のリスクとして,高齢,低体重,腎機能障害,抗血小板薬の併用が明らかにされている.抗凝固療法中は,脳内出血予防のため十分な血圧管理が重要である.ⅠはじめにⅡ非弁膜症性心房細動における塞栓症リスク評価と抗血栓療法の選択心房細動(atrial fibrillation:AF)による塞栓症を防ぐためには抗凝固療法が不可欠であるが,経口薬としてはワルファリンが長年にわたってほぼ唯一の治療薬であった.近年,ワルファリンに代わる新規経口抗凝固薬として,抗トロンビン薬と抗Xa薬が,非弁膜症性心房細動に伴う脳梗塞と全身塞栓症予防を適応として開発された.これまでに,抗トロンビン薬のダビガトラン(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)と抗Xa薬のリバーロキサバンが処方可能になっている.抗Xa薬はさらに,アピキサバンやエドキサバン(エドキサバントシル酸塩水和物)が使用できるようになる見込みである.本稿では,非弁膜症性心房細動患者における脳梗塞症予防のための抗凝固療法と,新規経口抗凝固薬の特徴と注意点を概説する.1 CHADS2スコアによる塞栓症リスクの評価非弁膜症性心房細動とは,リウマチ性僧帽弁疾患,人工弁および僧帽弁修復術の既往を有さない心房細動と定義されている1).非弁膜症性心房細動では,脳梗塞のリスク評価を行ったうえで適切な抗血栓療法を選択することが推奨されている.非弁膜症性心房細動における脳梗塞発症のリスクとして,脳梗塞や一過性脳虚血発作(transientischemic attack:TIA)の既往,高血圧,糖尿病,心不全,高齢,女性,左室収縮障害などが指摘されている.経食道心エコー図検査所見からは,左房内もやもやエコー,左心耳内血栓,左心耳駆出ピーク血流速度の低下(<20cm/秒)や大動脈弓部複合粥腫病変が指摘されている.経胸壁心エコー所見としては,左室内径短縮率(fractionalshortening:FS)*1国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管神経内科*2国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管神経内科科長84Current Therapy 2012 Vol.30 No.111184