カレントテラピー 30-11 サンプル page 20/36
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概要:
その戦略の再考が必要である.治療直後から数カ月以上にわたって神経再生が起こり,ドナー細胞の神経細胞への分化やホスト細胞の活性化が続き,神経回路の再構築が起こる.そのためいかに有効的で効率的に促進させる....
その戦略の再考が必要である.治療直後から数カ月以上にわたって神経再生が起こり,ドナー細胞の神経細胞への分化やホスト細胞の活性化が続き,神経回路の再構築が起こる.そのためいかに有効的で効率的に促進させるかが,骨髄幹細胞移植におけるリハビリテーションの重要な役割になると思われる.神経回路の再構築にどのような方法が最適かを,既存の手法や新たな手法なども考慮に入れて検討していく必要がある.目的とした神経回路を正確に賦活し,使用回数を増やすことが重要となり,運動方法と運動回数・頻度がポイントになってくると考えられる.さらに,リハビリテーション全体における目標設定も変化することが予想される.今までの目標設定は,「障害された脳の再生は困難」という考えの下,自宅や職場復帰を目指すという考え方であり,関節拘縮や廃用症候群を予防しながら,残存機能を最大限に活用し,足りない機能は補装具などで補い,ADLの獲得を図っていくというものである.より高い目標を達成するには,残存機能の程度が大きく影響してくる.しかし,骨随幹細胞移植による再生医療はこの考えを根幹から覆す治療方法であり,この新たな治療の確立に伴い,リハビリテーションの戦略も抜本的に変化していくと予想できる.また,四肢・体幹の機能障害のさらなる改善が期待でき,より高いレベルでの目標設定や目標達成率の向上が期待できる.増強した骨髄幹細胞を作成し,脳梗塞ラットへ移植することにより,治療効果の比較解析を行った.その結果,BDNFを強制発現するように遺伝子を操作した骨髄幹細胞を移植すると,通常の骨髄幹細胞を用いて治療を行った場合と比較して,より高い治療効果が得られることが判明した8).このように,遺伝子組換え骨髄幹細胞を作成することで,脳神経保護作用を期待できるサイトカインが高濃度で産生され,より良好な治療効果を発揮するのである.また,骨髄幹細胞は脳梗塞局所で血管新生を誘導することが判明している6), 10)~12).これは,いわゆる血管新生因子,例えばangiopoietin -1(Ang -1)10), 11)や胎盤増殖因子(placental growth factor:PlGF)6)が関係していると考えられている.従来の知見では,脳梗塞局所における血管新生が,どの程度,治療効果に影響するかは判明していなかった.そこで,われわれはAng -1を強制発現する遺伝子組換え骨髄幹細胞を作成し,治療効果の比較解析を行った.その結果,Ang -1を強制発現するように遺伝子を操作した骨髄幹細胞を移植すると,通常の骨髄幹細胞を用いて治療を行った場合と比較して,血管新生を促進させ脳血流の改善効果が高められ,より良好な治療効果が得られることがわかった10).さらに,作用メカニズムの異なる二つの血管新生遺伝子(Ang -1,VEGF)を導入した場合には,より高い治療効果が得られている11).このように,治療遺伝子を幹細胞に導入する,遺伝子・細胞療法の実用化が期待される.Ⅲさらなる基礎研究の発展骨髄幹細胞の治療効果のメカニズムが科学的に解明されてくると,さまざまな方法で治療効果を増強させることができるようになる.静脈内に投与された骨髄幹細胞は脳梗塞巣へ到達し,BDNF 8)やGDNF 16)などのサイトカインを介するメカニズムで強力な神経保護作用を発揮する.この治療効果のメカニズムを増強することができれば治療効果は格段に向上すると考えられることから,われわれは,人工的な遺伝子操作でこれらのサイトカインの発現をⅣおわりに骨髄移植などを代表とする体性幹細胞を用いた再生医療は,1安全性が高い,2自己移植が可能,3すでに一部は実用化されている,などの利点があるため,早急な実用化が期待されている.特に,骨髄幹細胞は非常に少量の骨髄液から,培養・増殖させることが可能であり,臨床応用においては,誠に使い勝手のよい細胞として認知されつつある.また,骨髄幹細胞移植は,脳卒中をはじめとする70Current Therapy 2012 Vol.30 No.111170