カレントテラピー 30-11 サンプル page 16/36
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脳卒中―変貌する治療・予防戦略脳梗塞に対する再生医療岡*1*2*3真一・佐々木祐典・本望修脳梗塞をはじめとする中枢神経疾患に対する神経再生医療は,世界的に注目されている.われわれは,骨髄間葉系幹細胞を経....
脳卒中―変貌する治療・予防戦略脳梗塞に対する再生医療岡*1*2*3真一・佐々木祐典・本望修脳梗塞をはじめとする中枢神経疾患に対する神経再生医療は,世界的に注目されている.われわれは,骨髄間葉系幹細胞を経静脈内投与で移植する脳梗塞治療の基礎研究を行っており,これらの研究結果に基づき,2007年から脳梗塞患者を対象とした臨床研究を進めている.従来の脳梗塞患者の自然経過と比較して,きわめて回復が良いと思われる症例も散見され,その回復過程は従来のものとは異なった経過を示した.一方,臨床研究の結果から,新たな検討事項も浮かび上がっている.再生医療の治療効果を十分に評価できる指標の策定や,その治療効果を十分に活かすことができるリハビリテーションの介入方法,目標設定などの変更も必要と思われる.さらに,治療効率を上げるサイトカインを発現させる遺伝子の細胞への導入なども実用化が期待されている.骨髄幹細胞移植のような新たな治療法の出現は,脳卒中をはじめとする神経疾患の治療にパラダイムシフトを生み出し,神経疾患克服のための多大な恩恵を与えると思われる.Ⅰはじめに神経細胞の再生は困難であるというCajalの説が1928年に発表されて以来,長い間その説は広く支持されてきた.しかし1990年代に神経幹細胞が発見されて以降,神経組織の再生を目指した研究は著しい発展を遂げてきた.今日,脳梗塞をはじめとする中枢神経疾患に対する神経再生医療は,その実用化に向け世界的に注目されている.神経再生医療は,主に二つに大別される.ひとつは自己複製能と多分化能を有した内在性の神経幹細胞をなんらかの手段により活性化させる方法であり,もう一つは外在性細胞を移植し神経系の細胞へと導く方法である.外在性細胞移植のドナーとしては,神経幹細胞のほか胚性幹細胞(ES細胞)や非神経系である骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stemcell:MSC),嗅神経鞘細胞(olfactory ensheathingcell:OEC)なども挙げられる.われわれも1990年代よりさまざまな基礎研究と並行し,脳梗塞モデル,脱髄モデルなどの中枢神経疾患モデルに対して各種幹細胞をドナーとした移植実験を繰り返し行ってきた.そのなかでも近年,骨髄由来のMSCを有用なドナー細胞として注目し,経静脈的に投与することで脳梗塞に対して著明な治療効果が認められるという研究結果を多数報告してきた1)~15).これらの研究結果に基づき,2007年1月より自己血清で培養を行った自己MSCを脳梗塞亜急性期患者に経静脈的投与を行い(図),その治療効果と安全性について検討を行った16).*1札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所神経再生医療学部門*2札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所神経再生医療学部門講師*3札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所神経再生医療学部門教授66Current Therapy 2012 Vol.30 No.111166