カレントテラピー 30-11 サンプル page 12/36
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概要:
脳卒中予防の動向集が全く抑制されない完全型ARは4.1%,部分的にしか抑制されない部分的ARは8.8%で,両者を併せて12.9%にAR(生物学的AR)を認めた.これらの症例においてARと血管危険因子の関連を分析したところ....
脳卒中予防の動向集が全く抑制されない完全型ARは4.1%,部分的にしか抑制されない部分的ARは8.8%で,両者を併せて12.9%にAR(生物学的AR)を認めた.これらの症例においてARと血管危険因子の関連を分析したところ,完全型ARは高血圧,糖尿病,脂質異常症の3つすべての危険因子を有している患者の割合が,2つ以下の患者よりも多い傾向にあった8).したがって,糖尿病合併例やハイリスク症例においてはアスピリンの血管イベント抑制効果が十分ではない可能性があり,これらの症例では他の抗血小板薬が第一選択として考慮される.2クロピドグレル脳梗塞,心筋梗塞,末梢動脈疾患を最近発症したことが明らかなアテローム血栓症患者を対象に行われたClopidogrel versus Aspirin in Patients at Riskof Ischaemic Events(CAPRIE)試験では,クロピドグレルはアスピリンよりも脳梗塞,心筋梗塞,血管死のリスクを8.7%有意に低下させ,脳梗塞に関しては有意ではないものの,7.3%リスクを低減させることが示されている9).本試験では,クロピドグレルはアスピリンに比して,特に末梢動脈疾患患者群において血管イベントを23.8%有意に抑制していた(図1)9).また,本試験の糖尿病を有する患者群のサブ解析では,アスピリンに比したクロピドグレルの血管イベントの抑制効果は,糖尿病患者において,より優れていた(図2)10).したがって,糖尿病合併例などのハイリスク症例や末梢動脈疾患を合併している症例が,クロピドグレル投与に適する病態であると考えられる.3シロスタゾールシロスタゾールは,抗血小板作用以外に基礎的実験において,大動脈平滑筋細胞増殖の抑制効果や血管内皮機能改善効果があることが知られている.また,シロスタゾールは日本人の非心原性脳梗塞患者を対象に行われた試験Cilostazol Stroke PreventionStudy(CSPS)では,プラセボとの比較において,出血合併症を増加させずに有意に脳梗塞再発を抑制し,層別解析ではラクナ梗塞における有効性も証明されている11).さらに,アスピリンとの非劣性を検証するために行われたCSPSⅡでは,アス相対リスク低下(%)脳卒中心筋梗塞全患者末梢動脈疾患-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40アスピリン優位クロピドグレル優位図1 CAPRIE試験における疾患別患者サブグループの血管イベント相対リスク低下〔参考文献9)より引用改変〕ピリンを上まわる脳卒中再発予防効果が示された(図3)12).また,シロスタゾールはアスピリンより出血性脳卒中(脳出血またはくも膜下出血)と入院を要する出血が明らかに少なかった(図3)12).ただし,両薬剤投与群の脳梗塞再発率は有意差がなかった(図3)12).さらに,中国においてシロスタゾールとアスピリンの脳梗塞再発予防効果を比較したCilostazolversus Aspirin for Secondary IschaemicStroke Prevention(CASISP)研究では,有意ではないがアスピリン群に比して,シロスタゾール群で脳梗塞再発が38%抑制されたうえに,出血合併症が有意に少なかった13).以上より,シロスタゾールは出血合併症が少ないという特徴からは,脳梗塞とともに脳出血の危険性も高い細動脈のリポヒアリノーシス(脂肪硝子変性)に起因するラクナ梗塞によい適応があると考えられる.しかし,シロスタゾールは頭痛や頻脈がアスピリンより多かった12).4抗血小板薬併用療法脳梗塞の再発予防における抗血小板療法の有効性は十分とはいえず,より強力な抗血小板薬の開発や,抗血小板薬併用療法の検討が行われている.ただし,強力な抗血小板療法は出血合併症も増加させてしまうという問題がある.本邦におけるBleeding withAntithrombotic Therapy(BAT)研究では,出血合併症の頻度が抗血小板薬併用療法では単独療法に比Current Therapy 2012 Vol.30 No.11113939