カレントテラピー 30-10 サンプル page 7/42
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表2急性骨髄性白血病の新規遺伝子変異遺伝子機能AML全体における頻度正常核型AMLにおける頻度他の遺伝子変異との関係IDH1クエン酸回路酵素(脱メチル化)5.5~8.5%10~16%NPM1, FLT3変異と共存, TET2変異と排他的....
表2急性骨髄性白血病の新規遺伝子変異遺伝子機能AML全体における頻度正常核型AMLにおける頻度他の遺伝子変異との関係IDH1クエン酸回路酵素(脱メチル化)5.5~8.5%10~16%NPM1, FLT3変異と共存, TET2変異と排他的不明IDH2クエン酸回路酵素(脱メチル化)9~12%6~19%NPM1, FLT3変異と共存, TET2変異と排他的不明TET2DNAメチル基の酸化酵素(脱メチル化)8~27%10~30%IDH1, IDH2変異と排他的不変DNMT3ADNAメチル基転移酵素18~23%27~37%NPM1, FLT3, IDH1変異と共存不良ASXL1コリプレッサー3.5~11%5~10%FLT3やNPM1変異と排他的不良BCORコリプレッサー-3.8%NPM1, FLT3変異と排他的,DNMT3A変異と共存不良BCORL1コリプレッサー5.8%-NPM1, CEBPA, TP53変異と排他的不明予後HOOOOHOHOIDH1/2OOIsocitrate NADP NADPHα-KG NADPH NADP 2-HGNH2NHNCytosineOOHDNMT3AHONH2NHNOOOH5-methylcytosine(5mC)TET2変異IDH1/2OHHOONH2NHOHNOOOH5-hydroxymethylcytosine(5hmC)図IDH1/2,DNMT3AおよびTET2によるDNAのメチル化と脱メチル化IDH1,IDH2はクエン酸回路にあってイソクエン酸をαケトグルタル酸(α-KG)へ変換する酵素である.変異IDH1,IDH2はα-KGをさらに2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)へと変換する.DNMT3AはCpGジヌクレオチドのシトシンを5-メチルシトシン(5mC)へとメチル化するDNAメチル基転移酵素である.TET2はDNAの5mCを5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に変換する酵素活性を有する.5hmCは細胞分裂やDNAの塩基除去修復機構により非メチル化シトシンへ置換され,脱メチル化される.TET2変異は機能喪失をきたして5hmC量が低下し,脱メチル化を抑制する.TET2の作用はα-KG依存性であり,IDH1,IDH2変異とTET2変異がともに5hmC産生を抑制し,DNAの脱メチル化を阻害することが明らかにされた.〔参考文献10),13),14)より引用改変〕内におけるクエン酸回路にあってイソクエン酸をαケトグルタル酸(α-ketoglutarate:α-KG)へ変換する酵素である(図)10).神経膠腫などの脳腫瘍においてその変異が同定されていた.IDH1遺伝子変異はR132,IDH2遺伝子変異はR140とR172にほぼ限られる11).変異IDH1,IDH2はα-KGをさらに2-ヒドロキシグルタル酸(2 -hydroxyglutarate:2-HG)へと変換する10).IDH1,IDH2変異はそれぞれAMLの約10%に認め,染色体リスク分類の予後良好群には少なく,中間群に多い.予後へ与える影響は不良,不変もしくは良好と結論が得られていない.TET2はDNAの5-メチルシトシン(5-methylcytosine:5mC)を5-ヒドロキシメチルシトシン(5-hydroxymethylcytosine:5hmC)に変換する酵素活性を有し,DNAの脱メチル化に働く(図).TET2変異は機能喪失をきたして5hmC量が低下し,脱メチル化を抑制する12).TET2変異はAMLの10~20%に認め,治療反応性と相関しないとする報告が多い.TET2変異はIDH1およびIDH2変異とは互いに共存しない13).TET2の作用はα-KG依存性であることが示され,IDH1,IDH2変異とTET2変異がともに5hmC産生を抑制し,DNAのメチル化を亢進することが明らかにされた(図)13).ヒストンH3のリジン残基の脱メチル化酵素もα-KG依存性であり,10Current Therapy 2012 Vol.30 No.10996