カレントテラピー 30-10 サンプル page 5/42
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概要:
白血病治療の最前線―EBMの先にあるものAMLの分子病態と分類*麻生範雄急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の病型分類として広く用いられている世界保健機関(WHO)分類2008年版はFrench-American-Brit....
白血病治療の最前線―EBMの先にあるものAMLの分子病態と分類*麻生範雄急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の病型分類として広く用いられている世界保健機関(WHO)分類2008年版はFrench-American-British(FAB)分類を基盤として染色体異常や遺伝子変異を導入し,二次性白血病も包含した分類である.AMLの網羅的な遺伝子解析により新たに同定されたIDH1/2やTET2などの多くの遺伝子異常がエピジェネティクスの調節分子である点は興味深い.AMLの遺伝子異常は,1染色体転座や点突然変異による転写因子の異常,2受容体型チロシンキナーゼや細胞周期調節因子の活性化変異,3DNAやヒストンのメチル化にかかわるエピジェネティクス調節分子の変異および4RNA修飾にかかわるmicroRNAやRNA結合タンパクの異常,などの複数の組み合わせからなる.そのいずれもが病態を形成し,治療反応性に関与する.網羅的な遺伝子解析の集積により精密な分子病型分類を行い,病態や治療反応性との関連を解析する必要がある.Ⅰはじめに急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の病型分類として,世界保健機関(WHO)分類2008年版が世界的に用いられている.WHO分類は形態分類のFrench-American-British(FAB)分類を基盤として,染色体異常さらに遺伝子変異を導入し,二次性白血病や形態異常を伴う病型も包含した分類である1).近年,全ゲノムシークエンス解析などの網羅的な遺伝子解析が実用化され,AMLにおいても新たな遺伝子異常が数多く同定された.本稿では,新たに同定された遺伝子異常を中心に,遺伝子異常からみたAMLの分子病態と分類について概説する.ⅡAMLの染色体異常によるリスク分類1998年,英国の医学研究協議会(MRC)により提唱された染色体異常によるAMLの全生存率(overall survival:OS)に関するリスク分類が広く用いられている2).最近,MRCグループは5,800例以上の解析による改訂を行った3).その結果,予後良好群約25%,中間群約58%,不良群約16%に分類された.また,オランダのグループにより提唱されたmonosomal karyotype(MK)は,常染色体のモノソミーが二種類以上あるいは一種類と他の構造異常の併存と定義され,より予後不良群とされた4).染色体異常のみの予後リスク分類にはいくつかの問題点もある.第一に,正常染色体を含む予後中間群が過半数を占め,その予後には大きな幅がある.*熊本大学大学院生命科学研究部血液内科学分野准教授8Current Therapy 2012 Vol.30 No.10994