カレントテラピー 30-10 サンプル page 4/42
このページは カレントテラピー 30-10 サンプル の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
白血病治療の最前線―EBMの先にあるもの―企画名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学教授直江知樹エディトリアル本号は「白血病治療の最前線」と題した特集を組む機会を与えられた.副題を“EBMの先にあるも....
白血病治療の最前線―EBMの先にあるもの―企画名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学教授直江知樹エディトリアル本号は「白血病治療の最前線」と題した特集を組む機会を与えられた.副題を“EBMの先にあるもの”として,最新の白血病治療とともに診断や基礎研究についても,“最前線”で活躍する専門家にレビューしていただいた.2008年のWHO分類にも盛り込まれているように,白血病の診断・分類には染色体・遺伝子は欠かすことのできない検査となっている.最近では次世代シークエンサーによる遺伝子の解析技術が飛躍的に進歩しており,その結果,多くの未知の遺伝子異常が続々とクローニングされるようになっている.これまで染色体核型正常の急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia:AML)では,NPM1やFLT3変異を除けば,その責任遺伝子は不明であった.また骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)では一部AMLと重なる異常は見いだされているものの,MDSを際立って特徴づける遺伝子異常は報告されてこなかった.しかし最近,エピゲノム修飾酵素の変異あるいはRNAスプライシング関連分子の変異が発見されたことは特筆すべきだろう.これらの発見がAML・MDSにおける分子理解を広げるとともに,新たな標的分子あるいは治療戦略に繋がることを期待したい.ゲノム解析とともに注目される研究として,白血病細胞における二つの不均一性が挙げられる.ひとつは白血病細胞における分化のヒエラルキーであり,もう一つは遺伝子異常の蓄積あるいは分枝にみられる白血病クローンの多様性である.これらの不均一性は治療への反応性や再発にもかかわるとみられており,このあたりを“白血病研究の最前線”として,また“白血病および関連腫瘍の病態と分類”ではこれらを踏まえた分類の執筆をお願いした.白血病の治療については,慢性骨髄性白血病では分子標的治療の進展が著しく,現在では耐性や残存の克服,そして治療中断に関心が集まっている.また急性前骨髄球性白血病も標的治療によって,最も治癒が期待できる急性白血病となった.これらに比較すると,AMLについては依然としてアンスラサイクリンとシタラビン(Ara -C)がkey drugである.昨年の米国血液学会(ASH)ではゲムツズマブオゾガマイシンが話題であったが,画期的な新薬が待たれている.これら病型別のレビューを“エビデンスに基づく治療Update”として,補足部分を“治療薬解説”や“Key words”のコーナーで紹介していただいた.小誌が白血病治療に取り組まれている専門家はもちろん,医学の進歩全般に関心をおもちの臨床家・研究者にも役立つことを願ってやまない.Current Therapy 2012 Vol.30 No.109937