カレントテラピー 30-10 サンプル

カレントテラピー 30-10 サンプル page 36/42

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白血病治療の最前線―EBMの先にあるもの白血病治療ガイドライン浜松医科大学腫瘍センター教授大西一功2005年に日本癌治療学会において作成された「抗がん剤適正使用ガイドライン」の造血器腫瘍の項目は,きわめて簡....

白血病治療の最前線―EBMの先にあるもの白血病治療ガイドライン浜松医科大学腫瘍センター教授大西一功2005年に日本癌治療学会において作成された「抗がん剤適正使用ガイドライン」の造血器腫瘍の項目は,きわめて簡潔なものであった.しかし現在の高齢化社会における造血器腫瘍患者の増加に加え,新規治療薬の開発も精力的に進められるなか,日常臨床において最善の治療法の選択と実践は必ずしも容易ではなくなってきている.さらに,がん診療の「均てん化」を目的とした施策により,血液専門医のみならず,臨床腫瘍医にとっても造血器腫瘍患者に対する「標準的治療」の実践が求められるようになった.こうした状況下で,日本血液学会としても2011年5月に「ガイドライン作成委員会」を設置し,本格的な「造血器腫瘍診療ガイドライン」を作成することにより,社会的要求に応えることとなった.本ガイドラインは,日本および海外のエビデンスに基づいたEBMの手法を用いて作成されている.文献のエビデンスレベルについては,各研究機関より種々のものが提案されているが,本ガイドラインでは,このうち米国国立癌研究所(NCI)のComprehensiveCancer DatabaseのPhysician Data Query(PDQ R)で用いられている表示法を採用した.この表示法は,PDQ編集委員会におけるエビデンスレベルの公式順位分類により試験結果を「研究デザインの強さ」のみならず,「エンドポイントの強さ」の2つの尺度に基づいて順位づけした点が優れている.推奨グレードは,1エビデンスのレベルおよび数と結論のばらつき,2臨床的有効性の大きさ,3臨床上の適用性,4有害性や費用に関するエビデンスの各要素を勘案して総合的に判断される.しかし白血病は由来する細胞系列,遺伝子・染色体異常により細かく分類されており,治療法も病型により異なる.したがって各病型ごとの多数症例による無作為比較試験は困難な場合も多く,第Ⅱ相試験の成績に基づいて判断せざるをえない場合も多い.そこで本ガイドラインでは,National ComprehensiveCancer Network(NCCN)Clinical PracticeGuideline in Oncologyが採用しているエビデンスとコンセンサスによる推奨グレードの一部改変したものを用いている.もとより診療ガイドラインはあくまで特定の対象と条件下での試験成績に基づき,そのなかでの平均的なエビデンスを示したものにすぎず,それを外挿あるいは敷衍して論ずることを保証してはいない.しかし白血病は一定の割合で治癒を見込める疾患であることから,適切な治療法の選択は不可欠である.この意味で本ガイドラインが白血病治療成績の向上に役立つことを期待している.96Current Therapy 2012 Vol.30 No.101082