カレントテラピー 30-10 サンプル page 26/42
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概要:
すなわち,診断時点からすでにCNAプロファイルの異なるsubcloneごとに,白血病幹細胞が存在していることが示された.これらのsubcloneの系統解析では,B -ALLの進展に伴ってfounding cloneに新規のCNAが生じ,多様な....
すなわち,診断時点からすでにCNAプロファイルの異なるsubcloneごとに,白血病幹細胞が存在していることが示された.これらのsubcloneの系統解析では,B -ALLの進展に伴ってfounding cloneに新規のCNAが生じ,多様なsubcloneの派生がみられる分枝構造を呈していた17).これらの報告から,B -ALLは,heterogeneousなsubcloneにより構成され,それぞれのsubclone集団内に腫瘍再構築能を有する白血病幹細胞が存在することが明らかになった.そして,白血病幹細胞に,新規の遺伝子異常が獲得,蓄積されることで,新たなsubcloneを維持する白血病幹細胞が出現し,クローン構造がダイナミックに変化しB-ALLが進展していると考えられた.B -ALLに続き,2012年にAMLにおいても,全ゲノムシーケンスによるクローン解析が報告された.Dingらは,8例のAML症例で,初診時と再発時の白血病細胞をペアにして,全ゲノムシーケンスを行い,獲得された遺伝子変異をクローナルマーカーとして用いることで,AMLクローンの推移を評価した.その結果,初診時から再発にいたる過程で,2つのタイプのクローン変化があることが明らかになった.一つは,初診時AMLが,ほぼ1つのfounding cloneにより構成されており,化学療法後に残存したfounding cloneが新規遺伝子異常を獲得し,再発にいたるタイプであった.もう一つは,初診時の段階からすでに,AMLがfounding cloneとfoundingcloneより派生した複数のsubclone集団により構成されており,化学療法後に残存するsubcloneが増殖し,再発にいたるタイプのクローン変動であった18).骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)/AMLにおいても,全ゲノムシーケンスによるクローン解析が報告されている.Walterらは,7例のMDS/AML症例で,MDS時点での骨髄細胞とAMLへ進行した時点での骨髄細胞をペアにして,全ゲノムシーケンスを行い,MDSからAMLへと移行する過程でのクローン変化を評価した.その結果,骨髄中の芽球の割合にかかわらず,MDSおよびAMLの両方において,約85%の細胞がクローナルな細胞集団に属していた.このクローナルな細胞集団群は,MDSの段階で平均2.4クローン,AMLの段階で3.1クローンのfounding cloneとfounding cloneより派生したsubcloneにより構成されており,AMLに移行した時点でもfounding cloneは必ず残存していた.MDSからAMLへの移行は,MDS時点のクローンに遺伝子異常が加わることで,新規subcloneが出現し,クローンサイズの増大が生じ,最終的にAMLへと移行していた19).このように,AMLおよびMDS/AMLにおいても,白血病細胞集団は,1つのfounding cloneと,そこから派生した複数のsubcloneにより構成されていることが明らかとなり,B -ALL同様に,それぞれのsubcloneを維持する白血病幹細胞が存在していると考えられる.これらの研究から,ALL,AMLの両方において,白血病細胞集団内には,founding cloneとfoundingcloneから派生したsubcloneが共存していることが明らかになった.また,経時的なクローン解析から,白血病細胞集団を構成するクローン構造が,clonalevolutionにより,絶えず変化していること,そして,病期進展あるいは化学療法後の再発において,クローン構造の変化が,重要な役割を果たしていることが明らかになった(図).従来の異種移植系で評価可能な機能的白血病幹細胞も,subcloneごとに存在し,heterogeneousな細胞により構成されていることが予想される.しかしながら,現時点では,白血病幹細胞がsubcloneごとに,どのように異なる生物学的特徴を有しているかは十分にはわかっておらず,今後のより詳細な解析が望まれる.ⅥおわりにヒトAMLにおける白血病幹細胞同定の報告から20年以上が経過し,現在では,白血病幹細胞研究は白血病発症機序の解明のみならず,治療標的候補分子が多数同定され,治療への直接的な応用を目指す段階にまで到達している.白血病幹細胞を治療標的として排除することで理論的には治癒がもたらされると考えられ,予後の改善に与えるインパクトは,きわめて大きいと期待される.近年のsubclone解析から,白血病治療後の再発において,subcloneの出80Current Therapy 2012 Vol.30 No.101066