カレントテラピー 30-10 サンプル page 25/42
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概要:
白血病研究の最前線NOD-SCIDマウスへの移植系を用いた研究からは,正常では存在しないCD34+CD38 - CD19+分画に,B -ALL白血病幹細胞が存在しており,AML同様にCD34+CD38 -白血病幹細胞を頂点とする階層性が報告さ....
白血病研究の最前線NOD-SCIDマウスへの移植系を用いた研究からは,正常では存在しないCD34+CD38 - CD19+分画に,B -ALL白血病幹細胞が存在しており,AML同様にCD34+CD38 -白血病幹細胞を頂点とする階層性が報告された10)~13).しかしながら,近年になり,初期の知見とは異なった報告が続いた.le Viseurらは,抗CD122抗体にてマウスNK細胞を除去したNOD -SCIDマウスあるいはNOD/SCID/γc null(NSG)マウスを用いて,小児B -ALL細胞をCD34とCD19の発現をもとに分画した後,骨髄内移植を行い,白血病幹細胞分画の同定を行った.MLL転座を主に含む高リスクB -ALLではCD34+CD19 -,CD34+CD19+,CD34 - CD19+,ETV6-RUNX1を主に含む標準リスクB -ALLではCD34+CD19+,CD34 - CD19+分画を移植した結果,すべての分画から,同一表現型のB -ALLが再構築された.さらに同じ分画の継代移植を行っても,同一表現型のB -ALLが再構築され,すべての細胞分画に機能的白血病幹細胞が存在し,各分画の白血病細胞から,B -ALLが再構築可能であることが示された14).このように,従来の報告と異なった知見が次々と報告されるようになった背景として,異種移植のアッセイシステムの改善が考えられる.白血病幹細胞のin vivoアッセイは,従来のNOD -SCIDへ経静脈的移植から,NOD -SCIDマウスに抗CD122抗体投与を組み合わせる,あるいは,より高度免疫不全マウスであるNSGマウスを用いた移植系へと移行してきている.このような異種移植アッセイシステムの改善により,従来のアッセイ系では検出不可能であった白血病幹細胞分画が,検出可能になったものと考えられる.Morisotらは,予後不良小児B -ALL細胞をNSGマウスに移植し,白血病幹細胞の存在頻度を解析した結果,わずか1~100個の未分画ALL細胞で,B - ALLが再構築可能であり,B -ALL細胞の1~24%に白血病幹細胞活性があると推定された15).このように,高頻度で白血病幹細胞が存在する点からは,B -ALLを理解するうえで,AMLと同様の白血病幹細胞を頂点とする階層性モデルには,限界があることが示唆される.Ⅴ白血病幹細胞とクローン解析近年の次世代シーケンサーをはじめとする,ゲノム解析手法の急速な発展に伴い,これまでの免疫不全マウスへの異種移植を中心とした白血病幹細胞解析に加えて,遺伝子異常をマーカーとした白血病幹細胞のクローン解析が注目されている.B -ALLにおいて,白血病細胞集団内における詳細なクローン解析が,2011年に報告された.Andersonらは,ETV6 -RUNX1陽性B -ALLにおいて,FISH法により,ETV6,RUNX1,PAX5,CDKN2Aの4遺伝子のコピー数の変化(欠失もしくは増幅)を同時に評価する方法を開発した.この解析により,ETV6-RUNX1転座のみを有するB-ALLのfounding cloneに,新たにゲノム欠失や増幅が生じることで,多様なsubcloneが派生していることが明らかになった.B -ALLは,診断時点ですでに,founding cloneおよびfounding cloneから派生した複数のsubcloneにより構成されていた.B -ALLを構成するsubcloneは,発症時と再発時で異なっており,再発時には,新規の遺伝子異常を獲得したsubcloneが優勢クローンとなっていた.また,B -ALL細胞を免疫不全マウスに異種移植を行うと,マウス内で再構築されるB -ALLは,複数のsubcloneから構成されており,それぞれのsubcloneごとに白血病幹細胞が存在していることが示された.この研究結果から,ETV6 -RUNX1陽性B -ALLは,複数のsubcloneにより構成されていること,そして,クローン構造が絶えず変化しながら,B -ALLの進展,再発が生じていることが明らかとなった16).Nottaらは,BCR -ABL陽性B -ALLにおいて,SNPアレイを用いたDNAコピー数変化(copy numberalteration:CNA)解析により,異種移植の実験系でsubcloneの変化を評価した.異種移植後に,免疫不全マウス内で再構築されるB -ALLのsubclone構成は,患者内でのクローン構成とは必ずしも一致しなかった.さらに,同一症例のB -ALL細胞を複数の免疫不全マウスに移植した場合,レシピエントマウスごとに,優性クローンも異なっていた.Current Therapy 2012 Vol.30 No.10106579