カレントテラピー 30-10 サンプル

カレントテラピー 30-10 サンプル page 24/42

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概要:
CD38+AML細胞やCD34 - AML細胞を移植してもマウスはAMLを発症しないが,AML細胞中に極少数存在するCD34+CD38 - AML細胞を移植するとAMLの再構築が認められた.以上より,AML白血病幹細胞は主としてCD34+CD38 -分....

CD38+AML細胞やCD34 - AML細胞を移植してもマウスはAMLを発症しないが,AML細胞中に極少数存在するCD34+CD38 - AML細胞を移植するとAMLの再構築が認められた.以上より,AML白血病幹細胞は主としてCD34+CD38 -分画内に存在していることが明らかになった1).さらに,ウイルスベクターによる遺伝子マーキングを行って連続移植でクローン追跡を行うと,白血病幹細胞集団も均一な集団ではなく,増殖能や自己複製能など機能的には不均一で,長期にわたって白血病を再構築できる細胞から短期的にしか維持できない細胞まで存在することから,白血病幹細胞には機能的な階層性が存在していることが報告されている3).また,CD34+CD38 - AML白血病幹細胞の多くは,細胞周期がG0期にあり,細胞周期依存的化学療法に対して抵抗性を示す.Ishikawaらは,ヒトAMLを移植した免疫不全マウスの骨髄中に存在するヒト白血病幹細胞が,正常造血幹細胞と同じ内骨膜ニッチに存在することを見出した4).内骨膜ニッチからのシグナルの存在下で,ヒト白血病幹細胞が自己再生をしている可能性が示唆されたが,この知見は,白血病幹細胞と正常幹細胞の自己再生をコントロールする環境からのシグナルが類似している可能性をも示唆している.このように,白血病幹細胞は表面抗原のみならず,細胞周期や骨髄ニッチなどについても正常造血幹細胞と類似点が多い.Ⅲ治療標的としてのAML白血病幹細胞AMLは化学療法により,一時的に寛解を得られても,残存した化学療法抵抗性の白血病幹細胞が再増殖して再発に至る.したがって,白血病幹細胞の根絶こそが治癒のために必要である.しかしながら,上述のようにCD34+CD38 - AML白血病幹細胞の大多数がG0期にあり,従来の細胞周期依存的な化学療法に抵抗性を示す4).また,白血病幹細胞は,自己複製能およびニッチを含めた骨髄微小環境に関しても正常造血幹細胞と類似した機構を利用しているために,正常造血幹細胞に影響を与えず,白血病幹細胞のみを特異的に標的とするには困難な点が多い.白血病幹細胞特異的な標的治療法を確立するためには,白血病幹細胞と正常造血幹細胞の生物学的特性の差異を明確にする必要がある.白血病幹細胞に対する治療標的分子候補としては,1細胞表面抗原,2自己複製関連分子,3細胞生存関連分子,4ニッチとの相互作用に関与する分子,5細胞周期・分化関連分子などが挙げられる.これらの標的候補分子のなかで,白血病幹細胞の細胞周期に注目した顆粒球コロニー刺激因子(G -CSF)併用化学5療法)や白血病幹細胞特異的表面抗原(CD123 6),CD44 7),CD47 8))に対するモノクローナル抗体は,異種移植系でAML白血病幹細胞に対するin vivoでの効果が報告されている.治療効果および特異性の観点からは,細胞表面抗原を標的としたモノクローナル抗体による治療は有望である.しかしながら,これら報告のある表面抗原は,正常造血幹細胞にも発現が認められ,よりAML白血病幹細胞特異的かつ高発現する抗原の同定が必要であった.この問題点を解決するために,われわれは,AML白血病幹細胞および正常造血幹細胞を純化し,マイクロアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を行い,正常造血幹細胞には全く発現せず,白血病幹細胞に特異的に高発現する細胞表面抗原としてT cell immunoglobulinmucin-3(TIM-3)を新規に同定した.そのうえでTIM -3を標的としたモノクローナル抗体治療がin vivoで正常造血幹細胞には影響を与えず,AML白血病幹細胞を特異的に傷害し得ることを報告した9).ⅣB -ALLにおける白血病幹細胞B -ALLでも免疫不全マウスへの異種移植実験により,ALL再構築能力を有する細胞集団の純化,同定が試みられてきた.NOD - SCIDマウスにB -ALL細胞を移植すると,マウス内でB -ALLを再構築可能であり,また継代移植しても,B -ALLの発症が観察されることから,B -ALLにおいても白血病幹細胞が存在していると考えられた.初期の78Current Therapy 2012 Vol.30 No.101064