カレントテラピー 30-10 サンプル page 23/42
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概要:
白血病治療の最前線―EBMの先にあるもの白血病幹細胞研究とクローン解析*1*2*3菊繁吉謙・宮本敏浩・赤司浩一急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)において,極少数の白血病幹細胞のみが,自己複製能....
白血病治療の最前線―EBMの先にあるもの白血病幹細胞研究とクローン解析*1*2*3菊繁吉謙・宮本敏浩・赤司浩一急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)において,極少数の白血病幹細胞のみが,自己複製能と白血病細胞への分化能を有し,白血病細胞集団を構成・維持している.同様に,急性リンパ球性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)においても,免疫不全マウスにALLを再構築可能な白血病幹細胞が存在している.化学療法により,一時的に寛解を得られても,残存した化学療法抵抗性の白血病幹細胞が,再増殖して再発に至る.近年の次世代シーケンサーを中心とするゲノム解析技術の進歩により,AMLおよびALLは,複数のsubcloneにより構成されていることが明らかになった.すなわち,白血病幹細胞も均一な細胞集団ではなく,subcloneごとに存在する不均一な細胞集団であることが示された.Ⅰはじめに近年注目を集めている「がん幹細胞(cancerstem cell)」は,腫瘍組織を構成するがん細胞のすべてが均一な造腫瘍能を有しているのではなく,少数存在するがん幹細胞のみが,自己複製を行いながら腫瘍を再構築する能力を保持しているというモデルである.このようながん幹細胞の存在をはじめて実験的に証明したのは,急性骨髄性白血病(acutemyeloid leukemia:AML)における白血病幹細胞の同定であった1),2).白血病幹細胞は,自己複製能力と未分化性の維持能力を獲得した細胞であり,少数の白血病幹細胞によって,白血病細胞集団全体が維持されている.腫瘍の根源である白血病幹細胞の純化により,白血病発症機構の解明に大きな進歩がもたらされた.本稿では,これまでのAMLおよび,急性リンパ球性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)における白血病幹細胞研究の経過と併せて,近年注目されている白血病におけるクローン研究について概説したい.ⅡAMLにおける白血病幹細胞白血病幹細胞の自己複製能や腫瘍再構築能を評価するためには,ヒト細胞を動物に異種移植する必要があり,ヒト細胞の拒絶を防ぐための正常免疫システムを破壊した免疫不全マウスの開発が進められてきた.1997年,Dickらは,免疫不全マウスであるNOD -SCIDマウスにヒトAML細胞を移植し,マウス内でヒト白血病を再構築した.ヒトの正常造血幹細胞はCD34+CD38 -という抗原発現パターンをもつが,マウス内にヒトAMLを再構築可能な白血病幹細胞も同じ発現パターンであることが明らかになった.すなわち,AML細胞の大多数を占めるCD34+*1九州大学大学院病態修復内科学(第一内科)特別研究員*2九州大学大学院病態修復内科学(第一内科)講師*3九州大学大学院病態修復内科学(第一内科)教授Current Therapy 2012 Vol.30 No.10106377