カレントテラピー 30-1 サンプル

カレントテラピー 30-1 サンプル page 6/30

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ニズムに関する研究は年々進歩を遂げている.本稿では,血圧の食塩感受性亢進の新規メカニズムを中心に概説する.Ⅱ腎臓の役割血圧値を心拍出量と血管抵抗の積と単純化することが可能である.心拍出量増加は食塩感受....

ニズムに関する研究は年々進歩を遂げている.本稿では,血圧の食塩感受性亢進の新規メカニズムを中心に概説する.Ⅱ腎臓の役割血圧値を心拍出量と血管抵抗の積と単純化することが可能である.心拍出量増加は食塩感受性高血圧で多く認められることが期待される.すなわち,腎Na排泄能の低下に基づき,循環血液量の増加をきたし,心拍出量が増えることによって血圧上昇をまねいていると考えるのが理解しやすい.しかし,現実はそれほど単純ではなく,心拍出量増大に伴う組織血流量の増加は長期的には正常化し,多くの食塩感受性高血圧患者は血管抵抗増加型の高血圧になるとされている2).そのメカニズムとしてはwholebody autoregulationやNa利尿因子増加などのさまざまな機序が推測されている.しかし必ずしも明確にされておらず,個々の高血圧患者における食塩感受性亢進の原因は多因子で,さらにそれぞれの因子の関与の程度もまちまちであると考えられている.しかし,いずれにしても食塩感受性高血圧の発症において重要な役割を果たしているのは腎臓である.実際,食塩感受性高血圧モデルとしてよく知られているDahl食塩感受性(S)ラットとその対照動物であるDahl食塩抵抗性(R)ラットで腎臓の相互交換移植を行うと,Dahl Sラットの腎臓を移植されたRラットは食塩負荷により高血圧をきたすが,逆にRラットの腎臓を移植されたSラットは食塩負荷を行っても高血圧を生じなかったという報告がある3).これは,Dahl Sラットにおける血圧の食塩感受性には腎における異常が本質的な役割を果たしていることを示唆している.横軸に血圧値,縦軸に尿中Na排泄量(Na摂取量を意味する)をとり,それらの関係をみた腎Na排泄機能曲線をとると,血圧の食塩感受性における腎臓の重要な役割が示される4).つまり,食塩非感受性高血圧では食塩摂取量が増加しても血圧に変化はないため,曲線は急峻になる.一方,食塩感受性高血圧では食塩摂取量の増加に伴い血圧が上昇するため,曲線の傾きは緩やかになる.すなわち,腎Na排泄機能障害を伴うために,血圧を上昇させ圧利尿によって代償しているのが食塩感受性高血圧という見方もできる.このように,腎Na排泄機能を低下し得る種々の因子が食塩感受性亢進を生じると考えられる.Ⅲ食塩感受性亢進とアルドステロン血圧の食塩感受性亢進をきたすホルモンとしてよく知られているのはアルドステロンである.アルドステロン産生性副腎腺腫による原発性アルドステロン症は,典型的な二次性食塩感受性高血圧である.しかし,あるタイプの本態性高血圧においてもアルドステロンが重要な役割を果たしていることは周知の通りである.その1例としてよく知られているのが肥満に伴う本態性高血圧の一部である.肥満者では食塩感受性亢進をきたしていることは古くから認識されていた.肥満高血圧患者は減塩による降圧が顕著であるが,非肥満高血圧患者では減塩を行っても降圧は認められないことが示されている5).また,減量が成功すると減塩による降圧は認められなくなる.肥満高血圧患者の一部では血漿アルドステロン値が上昇しており,これが食塩感受性亢進の原因となっている可能性が指摘されている.肥満者におけるアルドステロン産生亢進の機序として,脂肪細胞からアルドステロン放出因子が産生されている可能性について,われわれ6)を含むいくつかの研究室から報告されている.これには脂肪酸酸化物である12,13 -epoxy -9-oxo -10(trans)-octadecanoicacid(EKODE)7)や,C1q/TNF -αスーパーファミリーのcomplement C1q TNF -related protein(CTRP)8)などが挙げられている.このアルドステロンの増加は,肥満者でよくみられる腎障害の原因である可能性も指摘されている6).しかし,これ以外にもレニン・アンジオテンシン系の亢進,高インスリン血症,炎症,高LDLコレステロール血症なども原因として挙げられており,詳細なメカニズムは不明である.Current Therapy 2012 Vol.30 No.199