カレントテラピー 30-1 サンプル page 5/30
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概要:
これからの高血圧治療―残された課題への挑戦食塩感受性高血圧*1*2安東克之・藤田敏郎血圧の食塩感受性亢進は雑多なメカニズムが原因といわれているが,いずれも腎機能の異常をきたすという点では共通している.本....
これからの高血圧治療―残された課題への挑戦食塩感受性高血圧*1*2安東克之・藤田敏郎血圧の食塩感受性亢進は雑多なメカニズムが原因といわれているが,いずれも腎機能の異常をきたすという点では共通している.本稿では,われわれの最近の研究から示唆されたいくつかの食塩感受性亢進のメカニズムを紹介した.メタボリックシンドロームや幼若期においてはアルドステロンレベルが高いため,食塩感受性が亢進する.一方,血漿アルドステロン値の低い高血圧でも腎におけるミネラルコルチコイド受容体(mineralcorticoid receptor:MR)活性が亢進しているものもあり,それにはRac1の関与が推測される.食塩感受性高血圧は中枢交感神経亢進が重要な役割を果たしており,それは脳内酸化ストレス産生増加に基づいている.交感神経亢進は腎臓ではβ受容体刺激によってヒストンアセチル化の異常を生じ,WNK4を介するNa-Cl共輪送体(NCC)亢進を生じて,食塩感受性亢進をきたすメカニズムも考えられた.これらのメカニズムは決してすべての食塩感受性高血圧に共通するものではないと思われるが,今後の診断や治療への応用が期待されている.Ⅰはじめに本態性高血圧は,遺伝因子と環境因子によってその発症や進展が左右される多数の成因からなる疾患である.わが国では血圧上昇に大きな影響を与えるいくつかの環境因子のなかで,食塩過剰摂取は特に重要な位置を占めている.本態性高血圧患者は食塩過剰摂取で血圧上昇をきたしやすい食塩感受性高血圧と,食塩による血圧上昇が弱い食塩非感受性高血圧の2つに分けることができる1).ただし,血圧の食塩感受性も多くの遺伝ならびに環境因子が複雑にからみあう多因子性の病態である.すなわち,食塩過剰摂取で血圧が上がりやすいという病態によってひとくくりにされた雑多な集団なのである.原因の明らかな二次性高血圧は,食塩による血圧上昇を明確に他の疾患と区別しやすい.しかし,食塩感受性本態性高血圧では食塩による血圧上昇は明確にひとつの原因を割り出すことはできず,その区別も正規分布する食塩負荷時の血圧上昇の程度を恣意的に分割したもので,研究者によって絶対値の変化や%変化率をとるものがあり,その基準も異なる(例えば高血圧患者の研究論文では10%であるが,境界域または正常血圧者では5%など).さらには,加齢,肥満,腎障害の程度など明らかにその個人によって変化し得るものも腎臓におけるNaの処理,ひいては血圧の食塩感受性に影響するため,食塩感受性は必ずしも同じ個人で一定でなく変化する.したがって,実地臨床で食塩感受性の程度を診断して,治療応用することは容易ではないが,食塩感受性亢進のメカ*1東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科分子循環代謝病学講座特任准教授*2東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科教授8Current Therapy 2012 Vol.30 No.18