カレントテラピー 30-1 サンプル

カレントテラピー 30-1 サンプル page 25/30

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高血圧のデバイス治療久留米大学医学部心臓・血管内科准教授甲斐久史昨今の降圧薬治療の進歩にかかわらず,治療抵抗性高血圧は依然少なくない.降圧薬治療に対する抵抗性の原因は多岐にわたるが,交感神経系の持続的....

高血圧のデバイス治療久留米大学医学部心臓・血管内科准教授甲斐久史昨今の降圧薬治療の進歩にかかわらず,治療抵抗性高血圧は依然少なくない.降圧薬治療に対する抵抗性の原因は多岐にわたるが,交感神経系の持続的な亢進が重要な要因のひとつである.こうした治療抵抗性高血圧に対する非薬物治療,なかでもデバイス治療が近年,注目を集めている.特に腎交感神経活動や圧受容体反射系の異常をターゲットとしたデバイス治療はすでに海外では臨床応用あるいは臨床試験が始まっている.2009年,Krumらが治療抵抗性高血圧患者に対するカテーテルによる腎交感神経焼灼術1(RDN)の有効性を報告して以来),オーストラリアおよび欧州を中心に急激にRDNの臨床展開がすすんでいる.RDNは経皮的に大腿動脈より腎動脈にアブレーションカテーテルを挿入し,高周波エネルギーを用いて内膜側より腎動脈外膜を走行する腎交感神経を焼灼するものである.Krumらによれば,利尿薬を含む3種類以上の降圧薬を服用しても収縮期血圧が160mmHg未満とならない治療抵抗性高血圧患者にRDNを施行したところ,収縮期/拡張期血圧が1カ月後の時点で14/10mmHg,3カ月後で21/10mmHg低下し,2年以上にわたり降圧効果が持続した.一方で腎動脈RDN施行部位の狭窄あるいは瘤形成はみられず,RDNにより起立性低血圧や膀胱直腸障害が引き起こされないなど明らかな合併症は報告されていない.興味深いことに,RDNにより糖代謝異常,インスリン感受性が改善することが報告されている.これは求心性腎交感神経が遮断されるためとされている.わが国でも早期の導入を目指して臨床試験の準備が進行している.一方,交感神経を介して瞬時の血圧変動を調整する圧受容体反射系の異常が慢性期の血圧に影響を及ぼすかについては長年,議論の的であった.2004年以降Lohmeierらが植え込み型頸動脈洞刺激デバイスの慢性刺激により健常犬,肥満高血圧犬において降圧作用が持続することを報告した2).そこで高血圧患者を対象とした頸動脈洞刺激デバイスが開発され,欧州で行われた第Ⅱ相臨床試験では3年にわたり安全に35/20mmHg程度の降圧が得られることが示された.現在,無作為前向き試験が行われておりその結果が待たれる.近年の医学と工学の進歩によって,難治性高血圧を標的とした集学的アプローチの時代に突入した.今後さまざまな方面から,より高度な治療デバイスが登場してくると思われる.参考文献1)Krum H, Schlaich M, Whitbourn R, et al:Catheter-based renal sympathetic denervation for resistant hypertension:amulticentre safety and proof-of-principle cohort study. Lancet 373:1275-1281, 20092)Lohmeier TE, Irwin ED, Rossing MA, et al:Prolonged activation of the baroreflex produces sustained hypotension.Hypertension 43:306-311, 200472Current Therapy 2012 Vol.30 No.172