カレントテラピー 30-1 サンプル page 24/30
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概要:
Key words上し,国民の健康と福祉に大きく貢献し,かつ医療経済にきわめて良好な影響をもたらすことは,自明のことといえる.この度改訂された『家庭血圧測定の指針』が,広く医療界において認知され,実践されるこ....
Key words上し,国民の健康と福祉に大きく貢献し,かつ医療経済にきわめて良好な影響をもたらすことは,自明のことといえる.この度改訂された『家庭血圧測定の指針』が,広く医療界において認知され,実践されることを強く希望するものである.ARBと発癌東京大学大学院医学系研究科臨床疫学システム教授山崎力アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を服用し続けると発癌リスクが上昇することを示す論文が『Lancet Oncology』2010年6月14日号に掲載された.これは9つのランダム割付介入試験(RCT),94,570例を対象に検討したメタ解析で,新規癌発症リスクがARB群7.2%,対照群6.0%とARB群で有意(p=0.016)に高く,そのなかでは新規肺癌のみがARB群で25%有意(p=0.01)に上昇した.この論文に対して批判的吟味(criticalappraisal)を試みたい.メタ解析は「究極の後づけ(post hoc)解析」となることが多い.そのため対象論文を絞り込む際に作為が生じやすいとされる.たとえば対象に選びたいA試験の登録患者数が1,500人,できれば除外したいB試験のそれが800人だったとすれば,1,000人以上が登録されたRCTを解析対象とすることで見事思惑とおりの解析ができてしまう.今回は,論文を読む限り対象論文を60から9に絞り込む過程が明確でなく,意図的に絞り込んだ可能性が否定できない.薬剤の効果を証明する最も有効な手法はRCTであるが,有害事象の検出に関しては必ずしもRCTが最適とは限らない.発現頻度が小さく,あるいは発現までに時間がかかることが多いためである.発癌リスクを検出するためには悉皆(全数)調査のほうが有用とも考えられる.RCT,前向きコホート研究などで見いだされた因果関係については必ずしも理論的裏づけが必須ではないが,あったほうがよりエビデンスとして強固ではある.まず非臨床試験で発癌性が確認されていないことが挙げられる.また,ARBの抗炎症作用が発癌につながる可能性を指摘する意見があるが,説得力の弱い推測に過ぎず,大勢から賛同が得られるとは思えない.いずれにしても,リスクのない薬は存在せず,リスクとベネフィットの両面からの検討が必要なことはいうまでもない.今回の対象コホートの追跡を含めた大規模かつ長期の調査が求められる.Current Therapy 2012 Vol.30 No.17171