カレントテラピー 30-1 サンプル page 23/30
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概要:
これからの高血圧治療―残された課題への挑戦改訂された家庭血圧測定指針東北大学大学院医薬開発構想講座教授今井潤今日,家庭血圧測定は高血圧診療における,標準的な方法に成長したといっても過言ではなかろう.こ....
これからの高血圧治療―残された課題への挑戦改訂された家庭血圧測定指針東北大学大学院医薬開発構想講座教授今井潤今日,家庭血圧測定は高血圧診療における,標準的な方法に成長したといっても過言ではなかろう.これまでの家庭血圧を用いた多くの臨床研究や,疫学研究の成果から,家庭血圧が従来の診察室血圧より情報量が多く,正確で安定した情報であることは疑いない.また,時間の関数としての血圧情報が容易に得られることは,本法の特徴である.これまでの高血圧診療のゴールドスタンダードであった診察室血圧が,家庭血圧にとって代わられることは,時代の趨勢といえよう.事実,世界の多くのガイドラインは,家庭血圧の臨床的意義を高く評価し,日常診療の方法としてこれを用いることを勧めている.この領域に関しては,本邦での研究と実践が世界を一歩リードし,『高血圧治療ガイドライン(2004)』に先立ち2003年,日本高血圧学会は「家庭血圧測定条件設定の指針」を上梓した.その目的は,それまで統一されていなかった家庭血圧測定条件を統一することで,これまで以上に家庭血圧の意義を周知せしめ,その臨床的立場を高めようとするものであった.これは少なくとも本邦において,家庭血圧診療のパラダイムシフトをもたらしたといっても過言ではなかろう.とはいえ,2003年に上梓された指針の内容は,必ずしも,医療界全体にあまねく理解され,汎用されたとはいえない.日本の高血圧医療の質を担保するためには,より一層,日本高血圧学会の『家庭血圧測定の指針』が周知されねばならないだろう.2003年の初版発行から8年が経過し,家庭血圧に関する情報の蓄積は著しい.そこで,これまでの情報を整理し,日本高血圧学会の家庭血圧測定に関する指針のさらなる周知をはかる目的で,2011年9月に『家庭血圧測定の指針』改訂第2版が上梓された.今回の指針は,基本的には第1版と大きな差はない.しかし序論として,指針の前提となるこれまでの家庭血圧の臨床的意義に関する臨床研究,疫学研究の成果を解説した.また,世界のガイドラインにさきがけ,家庭血圧の降圧目標レベルを設定し,これについても解説を加えた.なお,この降圧目標レベルは,暫定的なものであるが,近い将来これが確定され,次の改訂では,より根拠のあるものとして提示されることが期待される.今回の改訂にあたっても,1機会の測定回数に関してが最も大きな論点であったが,結果として,記述は従来通りとなった.その根拠は,ギリシャ,フィンランドなどの疫学研究で1回目と2回目の測定値の平均値に,予後予測能という観点から差がないという結果が報告され,前版の指針の主張“1機会1回測定でもよい”が,追認されたことによる.ただし,日常診療での運用には,幅をもたせているのも今回の改訂の特徴といえる.今日,本邦には,約3,500万台の家庭血圧測定装置が,各家庭にあると推定されている.こうした装置を用い,正しく,長期間にわたって一般市民,高血圧患者が家庭血圧を測定することになれば,本邦の高血圧医療の質は向70Current Therapy 2012 Vol.30 No.170