カレントテラピー 30-1 サンプル page 10/30
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概要:
これからの高血圧治療―残された課題への挑戦血圧変動性星出*1*2聡・苅尾七臣2000年に日本においても高血圧治療ガイドラインの初版が発表され,近年では2009年に第3版が発表されている.これらのことより,高血圧....
これからの高血圧治療―残された課題への挑戦血圧変動性星出*1*2聡・苅尾七臣2000年に日本においても高血圧治療ガイドラインの初版が発表され,近年では2009年に第3版が発表されている.これらのことより,高血圧治療に対する標準的治療は確立されたと思われるが,近年では最適化治療を求めてさまざまなマーカー,指標に関する臨床研究結果が発表されている.血圧評価についていえば,外来血圧の評価だけでは不十分であり,自由行動下血圧計(ambulatoryblood pressure monitoring:ABPM)によって評価することがより高血圧診療に有用であることが報告されてきた.しかしながら,最近,外来血圧を用いた血圧変動の評価がより重要であるという報告がされるようになってきた.流行は10年サイクルでくるとよくいわれる.高血圧治療も,それにあてはまるのか?あるいは,本当にABPMより外来血圧が有用なのか?本稿では,血圧変動性に対する現在のトピックを記していきたい.Ⅰはじめに自由行動下血圧計(ambulatory blood pressuremonitoring:ABPM)や家庭血圧計の普及により,1機会の血圧だけでなく複数回の情報が簡単に得られるようになったため,血圧レベルだけでなく血圧変動の臨床的意義が注目されている.血圧変動とはいっても,体位変換(起立性血圧変動),運動,ストレスなどに伴う血圧の反射として即座に現れる変動,ABPMにて評価する1日の短期変動や,家庭血圧にて評価する日間の中期変動,体位変換(起立性血圧変動),そして,近年,RothwellらがAnglo -Scandinavian Cardiac Outcomes Trial(ASCOT研究)を解析した結果,来院時随時血圧の血圧変動が大きいこと,すなわち長期の血圧変動が心血管イベントと関連していることを示し,『Lancet』誌に同時に3つの論文を発表したことで,この分野が再注目されるきっかけとなった.本稿では,この血圧変動のoverviewと今後の課題について言及する.Ⅱ反射としての血圧変動ここでは,運動や起立時に伴う血圧変動について述べる.1運動に対する血圧の反応正常人が運動を行うと,血圧は通常150?220mmHg程度まで上昇する.運動に対する血圧の反応を検討した研究は過去より数多くの報告がある.運動時の血圧上昇が将来の高血圧発症に関連するかどうかということに関しては,米国のフラミンガム研究において,降圧薬を内服していない外来血圧140/90mmHg未満の成人男女2,310人を8年間フォローアップし,24*1自治医科大学内科学講座循環器内科学部門講師(睡眠・サーカディアン循環器医学講座兼務)*2自治医科大学内科学講座循環器内科学部門主任教授Current Therapy 2012 Vol.30 No.124