カレントテラピー 29-7 サンプル page 8/28
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概要:
の促進,脂肪組織からの脂肪酸遊離の促進,αグリセロリン酸の生成促進によりTGの合成を亢進させる.さらに血管内皮にあるリポタンパクリパーゼ(LPL)活性を抑制し,TGを多く含んだVLDLの異化を遅延させるので,結果として....
の促進,脂肪組織からの脂肪酸遊離の促進,αグリセロリン酸の生成促進によりTGの合成を亢進させる.さらに血管内皮にあるリポタンパクリパーゼ(LPL)活性を抑制し,TGを多く含んだVLDLの異化を遅延させるので,結果として血清TGは増加することになる.肥満,特に内臓脂肪肥満は内臓脂肪より脂肪酸が門脈に流入し,肝臓でのTG合成の基質となるばかりではなく,acyl CoA synthetaseの活性を高め,microsomal triglyceride transferproteinの量を増加させ,アポBタンパクの分解を抑制することによりアポBタンパクを増加させ,VLDL合成を亢進させる.また内臓脂肪肥満に伴う高インスリン血症は肝臓でのVLDLの合成を促進させ,その一方インスリン抵抗性のためLPL活性は低下し,VLDLの異化も遅延する.そのため血清TGは増加する.飲酒・肥満によるVLDL -TGの増加は血中のcholesterol ester transfer protein(CETP)によるVLDLから高比重リポタンパク(HDL)へのTGの転送を促進させ,またHDLからVLDL,低比重リポタンパク(LDL)へのコレステロールの転送を促進させる.結果として,高VLDL -TG血症(いわゆる高TG血症)とHDLコレステロール(HDL-C)値は逆相関することになるので高TG血症に低HDL -C血症が合併することになる.環境要因(飲酒・肥満)に加え遺伝要因の関与も示唆されている.痛風患者と健常者においてbodymass index(BMI)とアルコール摂取量を一定にし,血清脂質を調べたところ,痛風患者は健常者と比べて血清TGが高く,HDL-Cが低いことが示された1) .この結果は痛風患者の高TG血症は肥満や飲酒の環境要因以外に遺伝要因が存在していることを示唆している.さらにわれわれはTG代謝に関与しているLPLおよび肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceridelipase:HTGL)活性を痛風患者で調べたところ,飲酒量およびBMIで補正しても,これらの活性が低下していることが明らかになった.すなわち痛風患者ではLPL活性やHTGL活性が健常者と比べると低く,この低下がVLDLの異化の遅延に寄与しているものと思われる3) .しかしこの結果が遺伝要因と関連しているのかどうかは明らかではなく,さらなる検討が必要である.VLDLの構成タンパクであるアポEタンパク,アポC-Ⅱ,C -Ⅲタンパクは痛風患者で高値を示し,VLDLの増加を示唆している.一方,LDLの構成タンパクの一分子であるアポBタンパクは一分子のLDL粒子に含まれているので,アポBタンパクの高値は血清コレステロールの高値を示唆するが,痛風患者では血清コレステロール値が高くないところから,LDLの小粒子化が示唆された.事実,痛風患者では小粒子LDLの頻度が高いことが明らかになった2) .またアポEのalleleの検討においてその分布は健常者と痛風の間で差はなかったが脂質異常症をもった痛風患者ではε4を多く認めた4) .ε4はVLDLレセプターをdown regulationし,脂質異常症を起こすといわれているのでε4が痛風では脂質異常症の一要因になっている可能性が示唆される.またアポC-Ⅲの遺伝子分析ではallelic variantであるS2 alleleの頻度が痛風患者では高いといわれており脂質異常症との関連も示唆されている.痛風患者における脂質異常のもう一つの特徴は血清LP(a)の高値である5) .Lp(a)濃度と冠動脈疾患との関連が報告されており6) ,痛風患者では動脈硬化性疾患の頻度が高いのでLP(a)と動脈硬化性疾患との関連も示唆される.Ⅲ高尿酸血症に合併する脂質異常症の治療高尿酸血症に対する優れた尿酸低下薬が登場して以来,痛風患者の痛風腎における死亡は激減し,動脈硬化性疾患による死亡が増加しており,脂質代謝異常症に対する治療の重要性が高まっている.脂質代謝異常症に対する治療は食事療法,運動療法,薬物療法よりなり,これらを併用することにより一層効果を高めることができる.1食事療法優れた脂質異常症治療薬の出現で食事療法の有用性は影が薄くなった感はあるが,食事療法は高尿酸血症のみならず脂質異常症の治療の基本となるので,その指導は重要である.食物の種類により脂質異常症の食事療法と高尿酸血症のそれとは相反することがあるが,尿酸降下薬の作用が優れているので,脂18580