カレントテラピー 29-7 サンプル

カレントテラピー 29-7 サンプル page 21/28

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 29-7 サンプル の電子ブックに掲載されている21ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
特集高尿酸血症のマネジメント―臓器障害の観点からKey wordsメタボリックシンドローム大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学中辻秀朗大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学教授下村伊一郎現在,全世....

特集高尿酸血症のマネジメント―臓器障害の観点からKey wordsメタボリックシンドローム大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学中辻秀朗大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学教授下村伊一郎現在,全世界的に過栄養,運動不足に基づく生活習慣病や心血管疾患が増加している.そのようななか,心血管疾患の発症要因として,内臓脂肪蓄積を上流に耐糖能異常・脂質異常症・高血圧などの危険因子が一個人に集積する病態が注目され,この病態はメタボリックシンドローム(MetS)と定義された.アディポサイトカインの分泌異常が分子基盤と考えられ,現在,動脈硬化予防の新たなターゲットとなっている1) .高尿酸血症もまた近年増加している生活習慣病のひとつであり,痛風や尿路結石の原因としても知られるが,心血管疾患の独立した危険因子であることが明らかとなっている2) .高尿酸血症はしばしばMetSに合併してみられ,この場合,動脈硬化のハイリスクな病態として慎重に対応する必要がある.MetS合併の高尿酸血症に関してはいくつかの機序が提唱されている.MetSでは過栄養に伴うプリン体の摂取増加に加えて,肝臓でのインスリン抵抗性がペントースリン酸経路を活性化し,de novoのプリン体合成が亢進することにより尿酸産生過剰となり血清尿酸値が上昇する.またインスリンは腎尿細管においてナトリウム再吸収と共役して尿酸の再吸収を促進するが,MetSではインスリン抵抗性に伴う高インスリン血症により,ナトリウム再吸収の亢進を介して尿酸排泄が低下し,血清尿酸値が上昇する.フルクトースの過剰摂取は,肝臓での代謝の際にAMP分解亢進を介し尿酸合成を促進する一方で,乳酸の産生促進により尿酸の排泄が抑制され,高尿酸血症となる.MetSの病態基盤である内臓脂肪蓄積と血清尿酸値との直接の関連も明らかとなっている3) .以前,われわれは2年連続で健康診断を受診した一般都市労働者2,022名を対象に内臓脂肪面積と血清尿酸値の関連を調べた.高尿酸血症例(血清尿酸値? 7mg/dL)は19.6%にみられ,高尿酸血症者のうち,57.7%に内臓脂肪蓄積(? 100cm 2 )を認め,内臓脂肪面積は血清尿酸値の独立した規定因子であった.さらに1年間での内臓脂肪面積の変化と血清尿酸値の変化の関係を検討したところ,内臓脂肪面積の増減と血清尿酸値の増減は密接に関連していた.MetSを合併した高尿酸血症の治療においては,内臓脂肪蓄積を共通の基盤とした病態であり,一般的な高尿酸血症の治療(プリン体の摂取制限など.詳細は他項に譲る)に加えて,内臓脂肪の減量を試みることが重要である.実際に内臓脂肪蓄積を減少させることが,尿酸値だけでなく,血圧,糖・脂質代謝異常の改善,さらには心血管イベントの抑制につながることが明らかとなっている4),5) .参考文献1)Despres JP, Lemieux I:Abdominal obesity and metabolic syndrome. Nature 444:881-887, 20062)Culleton BF, Larson MG, Kannel WB, et al:Serum uric acid and risk for cardiovascular disease and death:theFramingham Heart Study. Ann Intern Med 131:7-13, 19993)Tamba S, Nishizawa H, Funahashi T, et al:Relationship between the serum uric acid level, visceral fat accumulation andserum adiponectin concentration in Japanese men. Intern Med 47:1175-1180, 20084)Okauchi Y, Nishizawa H, Funahashi T, et al:Reduction of visceral fat is associated with decrease in the number of metabolicrisk factors in Japanese men. Diabetes Care 30:2392 -2394, 20075)Okauchi Y, Kishida K, Funahashi T, et al:4 -year follow -up of cardiovascular events and changes in visceral fat accumulationafter health promotion program in the Amagasaki Visceral Fat Study. Atherosclerosis 212:698-700, 201080642